唐草図鑑
聖樹聖獣文様

単眼の神

Polyphemus
Yohann Heinrich Wilhelm Tischbein
Title :  Polyphemus  
1802(Landesmuseum Oldenburg)州立オルデンバーグ蔵

me ティッシュベイン( 「ゲーテの友人画家」である)が描く、一眼のポリュフェモス(3人のキュクロープスの中の名前) ・・ Up your ass !?(←Wikimediaで画像タイトルとなっている)
今まで見てきたことを少しおさらいすると

怪物的民族


Page 46 of Story of geographical discovery (Jacobs)
Illustraion from raw scan of The story of geographical discovery:
how the world became known Jacobs, Joseph, 1854-1916 New York :
D. Appleton The description in that work states:
"Geographical Monsters (from an early edition of Mandeville's Travels).
—Most of the mediæval maps were dotted over with similar monstrosities"

me 一つ眼の、怪物的民族としては、プリニウスの『博物誌』(Naturalis historia77年)、 Plyniusで見かけたと思う
矢印尾形希和子さんの 「教会の怪物たち━ロマネスクの図像学」が詳しい。これももう少し見直したいところだが、この頁ではギリシア神話の、ゼウスの父のクロヌスの兄である「単眼の神」として、また、それとは別の、ポセイドンの息子としてのキュクロープスを見たい・・

キュクロープス

Cyclops, (Greek: “Round Eye”)

me アポロド―ロスによれば、天空(ウラノス)と大地(ゲー)がまず生んだ3人の「百手巨人(ヘカトンゲイル)」のあとに、3人のキュクロープスたちを生んだという。かれらは 額に一眼を持っていた
ウラノスは彼らを縛してタルタロスへ投げ込んだ。

その後に、ウラノスはゲーによって、
ティータン族を呼ばれる子供たちと
(オーケアノス、コイオス、ヒューペーリオン、クレイオス、イーアペトス、末弟クロノス)
ティーターニスと呼ばれる娘たち
(テーテュ―ス、レアー、テミス(「法」)、ムネモシュネ―(「記憶」)、ポイベー、ディオーネー、ティア―)を生んだ。

ゲーはタルタロスに投げ込まれた子供たちの破滅に心平らかならず、クロノスに金剛の斧を与え、 オーケアノス以外は父を襲い、生殖器を切り放ち海に投じた。流れる血より、復讐の女神(エリーニュエス)たちが生まれ、クロノスが支配権を得た。

クロノスは再び彼らを駁してタルタロスに幽閉し、レアーを妻としたが、自分の子によって支配権を奪われるだろうと、ゲーとウラノスが予言したので、生まれた子どもを飲みこむのを常とし、ヘスティアー、デーメーテル、ヘーラー、プルートーン、ポセイドーンを飲み込んだ。
レアーはクレーターのディクテーの洞窟で、ゼウスを生み、ク―レースたち及びメリッセウスの娘たちに育てるように与え、クロノスにはゼウスの身代わりに石を飲み込ませた。

ゼウスが成年に達するやオーケアノスの娘メーティス(「智」)を協力者とした。彼女がクロノスに薬を飲むように与えたその薬の力で、飲み込んだ子供らを吐き出した。
彼らとともにゼウスはクロノスとティータンたちと戦を交えた。 (ティータノマキア)

十年の戦闘の後、ゲーはゼウスにタルタロスに投げ込まれた者たちを味方にしたならば勝利を得るだろうと予言した。
彼は彼らの番をしているカムペーを殺して、その縛を解いた。

そこでキュクロープスたちは、ゼウスには電光と雷霆(らいてい)を、プラートーンには帽子を、ポセイドーンには三叉の戟(ほこ)を与えた
神々はこれらの武具に身をよろい、ティーターン族を征服して、タルタロスに幽閉し、百手巨人を牢番とした。
しかし彼ら自身は支配権に関して籤を引き、ゼウスは天空を、ポセイドーンは海洋を、プルートーンは冥府の支配権を得た。

me 以上はアポロド―ロスのビブリオティケーからWikipediaでは、キュクロープスが、ゼウスにはサンダーボルト、ハデスには闇のヘルメット、ポセイドンには三叉の戟を作ったとある。

Zeus releases three cyclopes from the dark pit of Tartarus. They provide Zeus' thunderbolt, Hades' helmet of darkness, and Poseidon's trident, and the gods use these weapons to defeat the Titans.

me 以上は単眼の[神]キュプロクスの話だが、以下は単眼の[怪物]の話を見てみます

キュクロープスは、ギリシア神話に登場する卓越した鍛冶技術を持つ単眼の巨人であり、下級神である一族である。あるいは、これを下敷き及びベースとして後世に誕生した伝説の生物をも指す。(Wikipedia20180604閲覧)


エラスムス・フランキスキの著書に見られるキュクロープスの挿絵
Erasmus Francisci
(1627- 1694)ドイツの著作家

ホメロスのオデュッセイの「サイクロプス」

Polyphemus Eleusis 2630
Polyphemos Painter
Eleusis Amphora: funerary proto-Attic amphora. Detail of the neck:
Odysseus and his men blinding the cyclops Polyphemus.
circa 660 BC

me POLYPHEMUS AND ODYSSEUS・・こちらの一眼巨人は、海神ネプトゥヌス(ポセイドン)の息子ポリュフェモス。「オデュッセウスはトロイアへの遠征を終えて古郷イタケに帰る途中、人食いの怪物のような大男ポリュフェモスの眼をつぶした。そのことに怒った海神によって、その後の航海は困難を極めることになった」という。(『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』p117)
※その他の絵が見られるサイト・・
http://www.greeklegendsandmyths.com/polyphemus.html

矢印以前少々読んだホメロス Homerus・・「オデュッセイア」Odyssia 第9巻のあたりの話

ガラテイア

ルドンのキュクロープス Redon Zyklop anagoria

1914 Redon Zyklop anagoria
 The Cyclops, gouache and oil by Odilon Redon, undated
Kröller-Müller Museum
オディロン・ルドン(Odilon Redon、1840- 1916)

me ローマ神話の方で、
オヴィディウス(『変身物語』)によると、ガラテイアを愛してその恋人を殺し妻にしたというが・・優しそうな感じがする・・

Cyclops Polyphemus and his wife Galatea

Moreau Galatée
Polyphemus spies on the sleeping Galatea, Gustave Moreau (1880)

ギュスターヴ・モロー(Gustave Moreau, 1826–1898)

me この、モローの絵も、ゼウスにもオデュッセウスにも関係がない・・ 『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』のp126にガラテイアが出ていた。「醜い怪物ポリュフェモスに愛された海の精」ということだが、モローの絵では、醜い怪物には見えないのである・・


ラファエロ『ガラテイアの勝利』

Galatea Raphael  
『ガラテイアの勝利』(1512年) ヴィッラ・ファルネジーナVilla Farnesina
「ラファエロの作品中、唯一著名な神話画である。」
Raphael (1483–1520)

me このラファエロの絵の「勝利」という意味が分からなかったのだが、これは、エロスの妻、プシュケの物語を主題に描かれた作品で、ポリュフェモスに関係がないシーンであった・・ 『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』のp126に 「魂の愛」を求めるガラテイアの眼差しという言う解説。
「貝殻の凱旋車に乗りイルカを御すガラティア。その眼差しは天に向かい、魂(精神・理性)の愛を求めている、それとは対照的に、矢を放つクピドや海のニンフたちと戯れるトリトンは、世俗の愛色を象徴するという画家独自の解釈」とある。解説の続きは以下・・

繰り広げられる恋の三角関係
一眼巨人ポリュフェモスに愛された海のニンフ(ネレイス)
海神ネプトゥヌスの妻アンフィトリテや英雄アキレウスの母テテイスとは姉妹に当たる
『変身物語』から、醜い怪物ポリュフェモスと美青年アキスとの三角関係が絵画や彫刻の主題となる。アキス「と海辺で愛し合う姿、嫉妬に狂いアキスに石を投げつけるポリュフェモスから逃げる姿などが、とりわけ16・17世紀に好んで描かれた。いずれの場面でも、人魚トリトン、海のニンフたち、海のケンタウロスらに囲まれている。


me まとめると、キュクロープスは、ゼウスの雷霆を作った 叔父にあたる(ゼウスの父の兄)神(三人)であるが、奇形であり、忌まれ退治される存在(怪物)であり続け、オリュンポスの鍛冶の神ヘーパイストス(ウルカヌス)と混同される部分がある。ヘーパイストスも、ホメロスによれば、びっこで醜く、妻のアプローディテに美男子のアレスと浮気される。このあたりの話はダン・シモンズが言うように、(※ゼウスに戻る)まさにあきれた神々の話なのだが、ゼウスの盾アイギス、アキレウスの武具などを作ったとされる。

主神とその妻たる神の間の最初の子が奇形である点から、日本神話における蛭子神との類似性も語られる。(Wikipedia20180604閲覧)

『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』
【神話の登場人物】の項:
ユピテル/ゼウス  サトゥルヌス/クロノス  ネプトゥヌス/ポセイドン  アポロ/アポロン  バッカス/ディオニュソス  マルス/アレス  ケンタウロス サテュロス  プロメテウス ペルセウス ヘラクレス オデュッセウス/ウリクセス  オルフェウス ナルキッソス  ユノ/ヘラ  ウエヌス/アフロディテ 三美神  ミネルヴァ/アテナ  ディアナ/アルテミス アウローラ/エオス パンドラ  クピド/エロス プシュケー  ニンフ(ニュンフェ) ガラテイア  ダナエ イオ  ヘレネ/ヘレナ  ピュグマリオン  

me ここで徐々に、上記の図鑑の神名が、ローマ神話寄りなのに、違和感を感じ始めた。ジェーン・E・ハリソン(1850-1928)の、『ギリシアの神々(神話学入門)』(ちくま学芸文庫1994 船木裕訳);原著「Mythology」 (1924)刊)の序文には 

数十年前まではギリシアの神々をローマ風の名前で呼ぶのが普通でした、こうした悪習は幸せなことに廃れました (p21)

・・とあるのだが、どういうことで復活したのだろうか??
たしかに、ジェーンは、宗教神話に進化論的考えを持っていて、その明確なことに驚いた(以下) 

人間は後期の段階の至って初めてその崇拝するものに対して完全な人格を付与する

人格は動物や人間の姿かたちを与えることから始まる
神の擬人観(anthropomorophism 「神人同型説」)以前に、アニミズム(animism 「精霊信仰」)の段階があり、そこでは神々というのは至る所どこにも潜んでいるはっきりしない諸々の威力である

人がそれら(の時、所、形など)を限定し、それら明確な形態を与え、それらと固定した関係に入った時に、それらは本当の神々となる

諸々の「力」からさまざまの「人格」になった時、その時に初めてそれらは神話[体系]を持ちうる

ローマの神話「体系」として知られているもの、つまりオヴィディウスの書き残した神話『変身物語』はギリシア神話を、ローマ風の環境に移し替え、変形したものにすぎない(p26)

ローマ人は信仰心篤く、見えざる者に対する恩恵を深く感じていたが、後期になってギリシアの影響を受けるまでは、iconist[聖像崇拝者] 「イメージのつくり手」、神話作者ではありませんでした

「神々は」とヘロドトスが述べています。「ホメロスとヘシオドスによってつくりあげられた。」
ギリシア人は作る者たち、形に現す者たち、芸術家の民族だった。

me とにかく、神名は、ギリシア名を先にして、このあと再度、ヘルメス、ポセイドン、ヘラ、アテナ、アプロディテ、アルテミス、アポロン、ディオニュソスをみておくことにします・・まとめはこちらに続けるが、
ジェーン・E・ハリソンの、『ギリシアの神々(神話学入門)』においては、ポセイドンが特別の主役であり、キュクロープスがポセイドンの息子とされることについての考察も大部のものであった


希臘(ギリシア)

墓の彫刻カリアティド(女性像柱)とテラモン(男性像柱)パルテノン神殿(行列)古代ギリシア芸術(4様式) 

ギリシアのケンタウロス ケンタウロスの図像ケンタウロスの神話ギリシア: 2つのモノ
最古のコリント式柱頭、 ギリシアの空想動物

アテナ―とギガントマキア(蛇の衣と蛇身)、アトラスとプロメティウス・大蛇テューポン 
アマゾネス: ギリシアの陶器画
陶画で見るペルシア戦争、 アッティカ、 アッティカの陶器アッティカの陶器(赤像式)、 アッティカの陶器(黒像式)、 幾何学(文)様式、 古代都市コリントス、 コリント式陶器「陶器年代」
 ギリシア史の現在解釈 エーゲ海地理

ギリシア美術における植物文様(アロイス・リーグル)
ギリシア美術(ポリット)
ギリシア絵画(ゴンブリッチ)、 ギリシア彫刻(ゴンブリッチ)
ギリシア美術を代表するもの(岩波美術館)

エリクトニウス(半人半蛇のアテネの王)  ヒエロニムス(獅子砂時計) 
カドモスとハルモニア(蛇に絡まれた人間像)

ギリシアの神々(神話学入門)』ちくま学芸文庫(ジェーン・E・ハリソン)
ギリシア・ローマ神話の美術表現 (2) 神話学のアウトライン

『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』

クロノス(時の翁) 角のある神々ゼウス イアソン(雄羊の皮) オデュッセウスの怪物(スキュラ キルケ―) キュクロープス  エリダノス(雄牛の角)(川―時間)


矢印聖樹聖獣文様(蛇 獅子 鷲 鹿・・・・)
ヴィラジュリアのエトルリアの文物 (ブルチのセントールなど)
フィシオログス(動物寓意集)9世紀

(※古いサイト)ガイア 『女神 -生ける自然の母- 』を読む

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