「ギリシア美術を代表するものは彫刻である。彫刻芸術。触覚の芸術。」と新装版 岩波美術館 歴史館〈第3室〉美神の世界―エーゲ海とギリシア・ローマ の巻末に。(前川 誠郎 解説)
Replica of the Parthenon in Centennial Parkwikimedia
Parthenon Nasburgense Tennesiae, replica aedificii Graeci celeberrimi.
このレプリカを見ると、よりはっきりするが、「パルテノン神殿が持つ最も特徴的な装飾は、胞室の外壁を取り囲むイオニア式のフリーズである」というわけだ。
パルテノンを飾っていたフェイデイアス派の彫刻は今は大部分外国へ持ち出されてしまいましたが、実は神殿そのものが見事な彫刻なのである。 持ち出された彫刻はギリシア美術の成果を世界に知らしめ。人々をアテネへ、アクロポリスへと誘い続けている。(『岩波美術館』:前川 誠郎 解説)
確かに無料公開の大英博物館で、エルギンマーブルを見られることはありがたいことです。
前掲書では、さらに、「山上のパルテノン神殿は、外から眺める彫刻そのものであり、荘厳は外観に対して厚い」といい、「
これに対して、バシリカ式聖堂では列柱が内部に入る。」
両者の聖道の在り方が、象徴的な対照をなすという。
==以下引用===========
聖道(ギリシア語:オドス・ヒエラ)
・・4年に一度のパンアテナイアの大祭にアテナ女神へぺプロスを奉献する行列は、パルテノン神殿の南北の長側面を通って東正面で合流した
聖道(ラテン語:ウィア・サクラ)
・・列柱が内部に入って身廊を側廊から区分し、その真ん中つまり身廊を通ってアプス(アプシス)に達する通路
比較すると、確かにはっきりします。
もう一つ、古代ギリシア彫刻や神殿が、19世紀のロマン派以来いわゆる「廃墟の美」に馴染んできた私たちは大きな戸惑いを覚えるに違いないという、強度の色彩に満ちた世界であったという点は、たしかに戸惑い残念な感じがする。
「ギリシアの神々は好色で残酷である」というのも「ザンネン」。(※芸術新潮 2015年 10 月号 [雑誌]にもある形容)
しかし、希臘彫刻を、ギリシア末期の全裸のヴィーナスを以て代表させるのは誤ったイメージであると、この「美神の世界」にもいう。
(前川誠郎 柳宗玄 高階秀爾編集)
(「BOOK」データベースの表現では誤解されるままかもしれないのでもう少し・・)
内容(「BOOK」データベースより)
古代エジプト・西アジアでは神々や帝王の威厳の永遠性を表現するために芸術があったのに対し、古代ギリシアでは人間の生の移ろいやすさを認識して、人体を有機的に表現することを重視した。海の泡から生まれたヴィーナスが、芸術を司る美神とされ、彫刻や絵画などの造形は地域や時代の流れの中で様式的な発展をとげていく。
==以下巻末「美神の世界」より引用======
ウェヌスとは「魅力」の意味。
アフロディーテ(ウェヌス=ヴィーナス)はあまりに美しいが故に彼女には一切が許されたという感じがする。つまり彼女の唯一最大の徳目は美人であるということ、このような美の神格化はギリシア神話以外にちょっと見当たらない。
およそ紀元前6世紀の初めころから、真にギリシア的と呼びうる特色を備えた作品が生み出されてゆく、ギリシア美術の基本は、有機的な人体表現の芸術という点にある。
有機的とは、頭首、胴、四肢などの各部分がそれぞれの機能を保持しつつ全体の中に組み込まれているということ、そこから人体比例という考えが出てくるのは当然のこととして、最も大切なのはギリシア人が人間の移ろいやすさをよく認識していたということ。
アフロディーテの造形表現は初めから裸体であったわけではない。
ここで、「戦死あるいは夭折した若者の最も美しい姿をこの世に残そうとして立てたクーロスの像」。若者の最美の姿とは裸身であったが、コーレと呼ばれる少女像はみなキトンやぺプロスをまとう。「裸体表現にははっきりと男女の別があった。」
全裸のヴィーナスはギリシア彫刻が既に発展の末期に達したころになって多くあらわれた。」・・ということで、クラッシック期を過ぎたあとのバロック的なものであると・・
有機的な人体表現、まさにその故にギリシア美術には様式の発展が存在した。
ギリシア美術に存在する様式の発展
(様式の発展=古代エジプトや西アジアの古代美術では全く認めることができないもの)
アルカイック(プリミティヴ):ぎこちなさを残した初々しさ
→
クラシック(ヘレニスティック、ぺルガメニック);調和のとれたおおらかな静けさ(※「高貴な単純さと静かな偉大さ」byヴィンケルマン)
→
バロック:調和の破れ、激しい動きと官能性
パルテノンの個々の彫刻が見られる UNIVERSITY OF OXFORDのサイト Classical Art Research Centre
ギリシア美術 時代区分: 西洋美術史講義by山口大学藤川哲教授
ここで、ギリシア美術の個々作品を見てみたい. 日本を代表する美術史家によるリストと、世界一の評のあるゴンブリッチのリストを
これと同時に、ゴンブリッチの古典的名著とされる『美術の物語』(THE STORY OF ART 16th edition(en.Wikipedia)のギリシアの部分を見ると、 「 3 THE GREAT AWAKENING」(偉大なる覚醒) というタイトルで、Greece,seventh to fifth century BC(ギリシア、紀元前7世紀から5世紀)の話であるが、 エジプトとの対比から始まる内容は、今見た、「岩波美術館」の内容とほぼ同じ、14の図版のタイトルを以下に
1(原著図版番号46) The mourning of the dead,c.700 BC ; 《幾何学文の壷》
Greek vase in the Ceometrid style;height 155cm ,61in;National Archaeological Museum,Athens
(これは『デピュロンの壺』→幾何学様式)
2(47) Polymedes of Argos The brothers Cleobis and Biton,c.615-590 BC
Marble,height 218 and 216cm,Archaeological Museum,Delphi
3(48) Acilles and Ajax playing draughts,c.540 BC;《将棋をさすアキレウス》
Vase in the 'black-figured' styke,signed by Exekias;height 61cm;Museo Etrusco,Vatican→アッティカの陶器
4(49) The warrior's leavetaking,c.510-500 BC
Vace in thec'red-figured' style.signed by Euthymedex;height 60cm;Staatliche antikensammlunge und Glyptothek,Munich
5(50) Iktinos The Parthenon,Acropolis,Athens,447-432 BC
A Doric temple
6(51) Athena Palthenos.c.447-432 BC
Roman marble copy after the wood,gold and ivory orijinal by Pheidias,
height 104cm,National Archaeological Museum,Athens
7(52) Hercules carrying the heavens,c.470-460 BC
Marble fragment from the Temple of Zeus at Olympia,height 156cm;Archaeological Museum,Olympia
8(53) Charrioteer,c.475BC 《デルフォイの御者》
Found at Delphi;bronze,height 180cm,Archaeological Museum,Delphi
9(54) Detail of figure 53
10(55) Discobolos,c.450 BC
Roman murble copy after the bronze original by Myron,height 155cm.Museo Nazionale Romano,Roma
11(56) Charioteer,c.440 BC
Detail from the marble frieze of the Parthenon:British Museum,London
12(57) Horse and horseman,c.440 BC
Detail from the marble frieze of the Parthenon:British Museum,London
13(58) Ulysses recognized by the old nurse,5th century BC
Vaseee int the 'red-figured'style;height 20.sm Museo Archeologigico Nazionale,Chiusi
14(59) Tombstone of Hegeso,c.400 BC
Marble,height 147cmNational ArchaeologicalMuseum,Athens
(無番)※(Greek sculptor's workshop,c.480 BC
Scene on the underside of a bowl in the 'red-figured' styel;left:blonze foundry with sketches on the wall;right:man at work on a headless statue,the head lying on the ground;daiameter 30.5cm.Antikensammlung,Staathliche Museen Berlin
1(原著図版番号60 ) The Erechtheion,Acropolis,Athens,c.420-405 BC
An Ionic temple
2(61) Goddes of victory,408 BC
From the balustrade round of Temple of Victory inAthens;marble,height 106cm,Acropolis Museum,Athens
3(62) Plaxitele Hermesn with the young Dionusus,c 340 BC
Marble,height231cm,Archaeoogicak Museum,Olympia
Vase in the 'black-figured' styke,signed by Exekias;height 61cm;Museo Etrusco,Vatican
4(63) Detail of figure 62
5(64) Apollp Belvedere,c.350 BC
eomanmarboe copy after aGreek original,height 224cm;
Museo Pio Clementino,Vatican
6(65) Venus of Milo,c.200 BC
Marble height 202cm;Louvre,Paris
7(66) Head of Alezandere the Great,c.325-300 BC
Marble copy after the original by Lysippus,height 41cm,Archaeologicao Museum,Istanbul
8(67) 'Corinthian' capital,c.300 BC
Archaeological Museum,Epidaurus
9(68) The altar of Zeus from Pergamon,c.164-156 BC
Marble;Pergamon museum,Staatlihce museum,Berlin
10(69) Hagesandors,Athenodoros and Polydoros of Rhodos Laocoon and is sons,c.175-50 BC
Marble,height 242cm;Museo Pio chlementino,Vatican
11(70) Maiden gathering flowers ,1stcentury AD
Detail of an wall-painting from Stabiae;Museo Archeologico Nazionale,Naples
12(71) Head of a faum,2bd century BC
Detail of an wall-painting from Herculaneum;Museo Archeologico Nazionale,Naple
13(72) Landscape,1st century AD
Wall-painting;Villa Albani,Roma
(無番)※
Greek sculptor at work,1st century BC
1.3×1.2cm;
Metropolitan Museum of Art,New York
Our Knowledge of history is always incomplete.There are always new facts to be discovered which may change our image of the past.
初版は1950年であったが、
1967年にサントリーニ島で発見されたギリシアの自由で優美な「絵画」 と、1972年に発見された美しい等身大のコピーではないギリシア彫刻、1977年代のProfessor AndronikosのマケドニアのVerginaの墓の発見などが追記されている。
1(406) Fisherman,c.1500 BC
Wall-painting from the Greek island of Santorini(anciant Thera);National Archaeological Museum,Athens
3(408,409) Heroes or athletes,5th century BC →
Faund in the see off the coast of southern Itary;bronze,both 197cm.high;Museo
Archeologico,Reggio de Calabria<
2(407) Datail of figure 409→ギリシア彫刻ゴンブリッチ図407
4(410) The rape of Persphone,c.366 BC →
Central section of a wall-paomting from a toyal tomb at Vergina in nothern Greece
→ギリシア絵画ゴンブリッチ図410
以上、ギリシア彫刻の代表をギリシア彫刻ゴンブリッチ図407、ギリシア絵画の代表をギリシア絵画ゴンブリッチ図410でまずチェックしました。
アッティカの陶器:黒像式、赤像式
なお、ギリシア神話のページは少し整理し直してから、後ほどこちらにもリンクします(20151005)・・
ℂlassic/sinwa.html
、classic/jyojisi.html
追記です
「オックスフォード世界美術事典」のギリシア美術の項目でに挙げられている図版リストです。(翻訳・執筆水田徹)
西洋建築史⇒「建築-美と空間」⇒パルテノンのフリーズの解釈、 ⇒フリーズのギガントマキアーと蛇
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