唐草図鑑
聖樹聖獣文様

聖獣 獅子・ライオン

エルサレムの獅子門 Gates in Jerusalem's Old City Walls detail
中心に円花文

me ライオン(獅子)については、古代の女神の玉座の2頭のライオン、エジプトの人身ライオン頭の女神、蛇に絡まれたライオン頭の人間像、、英雄の鎧の肩の獅子噛み、インドの人間ライオン、イギリスの王室のエンブレム等々・・いろいろ思い浮かびます。ここではまず、動物としてのライオンについてから。
次いで、「古代西洋文化とライオン」について概観します

ライオン・獅子

ライオン lion∥学名:Panthera leo
科名:ネコ科ヒョウ属


今泉 忠明(平凡社世界大百科事典)

シシ (獅子) の別名をもち,〈百獣の王〉と呼ばれ,ネコ科ではトラと並ぶ強大な食肉類)。


かつてはバルカン半島,アラビア半島からインド中部までと,アフリカの大部分に分布したが,
人間との競合で分布をしだいに狭め,前 100 年ころにはギリシアで滅び,
1858 年にアフリカのケープ, 65 年ナタール,91 年アルジェリア,1920 年ころモロッコやイラク, 30 年ころにはイランから姿を消し,
現在ではアジアではインド北西部カティアーワール半島のギル森林に一亜種インドライオンP.l.persicaが 180 頭ほど生息するにすぎない。

アフリカでもサハラ以南の荒れ地ぎみのサバンナにだけ分布し,生息数は 20 万頭かそれ以下と見積もられている。


寿命は飼育下での平均で 13 年,最高で 30 年近いが,自然では 15 年ほどとみられる。

◆WEB検索
ウィキペディア
オスは頭部から頸部にかけて(たてがみ)が発達する。

兎をむさぼり食うライオン(ドラクロワ画 ルーブル美術館蔵)
Lion Devouring a Rabbit 47×56センチ
(卯年にイメージ追加)

[古代西洋文化とライオン]【文化史】

今泉 忠明(平凡社世界大百科事典)
ライオンは古くから猟獣として重視され,アッシリアでは常時多数のライオンをおりに入れて飼っておき,猟の際にこれを狩場に放つことが行われていた。

アレクサンドリアでは狩猟の女神アルテミスの祭典に,飼い慣らしたライオンやチータに街の中を行進させる儀礼があったという。


またローマのアントニウスは,これを訓練し二輪戦車を引かせるようにしたとされる。
この時期には北アフリカやシリアなど文明地域のごく近辺に多数のライオンが生息していて,サーカス用動物として盛んに捕獲もされている。
さらに大プリニウスの《博物誌》には,前 1 世紀にライオンの群れと人間を闘わせる見世物がローマで始まったとの記述が見える。
将軍スラは雄 100 頭,カエサルは雌雄 400 頭のライオンを闘技場に放して剣闘士 (グラディアトル)と闘わせている。
当時はライオンの頭に外套 (がいとう) をかぶせれば簡単にこれをとらえることができると信じられていたらしく,
ちょうど闘牛のように外套 1 枚でライオンと対決する競技も行われた。
古代地中海文化圏での人とライオンの関係はこのように緊密で,たとえば《イソップ物語》にもその一端がうかがえる。

今泉 忠明(平凡社世界大百科事典)
猟師の網にかかったライオンが,むかし食べずに逃がしてやったことのあるネズミに助けられる話は, 〈事情が変われば強者も弱者に救われる〉との教訓を説いて有名である。
またいっしょに旅をした人とライオンの話もおもしろい。
人に絞め殺されるライオンの姿を刻んだ彫刻を見て, 〈人間は君より強い〉と人が自慢すると,
ライオンは〈もしわれわれに彫刻がつくれたら,ライオンの足に踏まれている多くの人を見るだろう〉と答えたという。
これらの物語にはライオン狩りの具体的な方法が述べられており興味ぶかい。

さらにライオンは文様にもとり入れられ,東アジアに広く伝播したため、
日本のように直接これを産しない地域にまでその形姿や象徴的意味が浸透した


ツタンカーメンの遺物

[象徴と伝承]


荒俣 宏(平凡社世界大百科事典)
獣類中もっとも勇敢でもっとも高貴な性質をもつとされるライオンを〈百獣の王〉とする伝統は古い。エジプトでは太陽または夏の象徴,ギリシア・ローマでは人間を除く動物のうち唯一慈悲心をもち,女や子どもを襲わない高潔な猛獣と考えられた。また,アッシリアの各王朝では国王がみずから狩る獲物であった。強大なその力は目に集中しているといわれ,したがってライオンは眠るときにも目を閉じないと信じられた。この特性により,ライオンは見張番の象徴となり,家の門や扉に彫刻が飾られるようになった。大プリニウスは《博物誌》で,ライオンを従順にさせるには目をふさげばよいと述べている。またライオンの子は生まれ出てのち 3 日間を仮死状態で過ごし,やがて両親のほえ声で目をさます。これをキリスト復活の故事になぞらえ,ライオンをキリストの聖獣とみなす伝統も中世には形成された。この獣は出歩くとき尾先の房で地を掃きながら進むので足跡を残さないともいわれる。

中世のベスティアリ (動物寓意譚)にはライオンに関する擬似自然誌が多数語られている。たとえば出産については,腹の子が子宮をつめで裂いて出てくるため母親の負担が大きく,めったに子を生まないとする。深傷を負ったときはサルを食って傷をいやし,つねに山の頂上にすんで下界を見据えており,その目でにらみつけられた獲物はすくんで動けなくなる。したがってライオンの目を携帯する人間は戦いに勝つといわれ,またその皮をかぶるかその脂を体に塗れば,毒虫や武器をはね返せると信じられた。しかしライオンにも弱点があり,ニワトリのとさかと戦車の車輪の前ではおびえて逃走する。これは中近東産のライオンを絶滅に追いやった戦車によるライオン狩りに由来する俗信であろう。また牛あるいはユニコーン (一角獣) を相手に激しく闘うといわれる。ドラゴン (竜) とも敵どうしで,両者が戦えば相打ちになる。

口から水を吐くライオン

古代エジプトでは,太陽がしし座にはいる 8 月にナイル川の増水が始まるため,泉や水源にライオンの頭を模した彫刻を飾った。この風習がギリシア・ローマに伝わり,口から水を吐くライオンの意匠が浴場などに使われるようになった。こうして太陽と関連づけられたライオンは,エジプトでは人面でライオンの体をもつスフィンクス,アッシリアでは有翼のライオンとして神格化され,いずれも力と知恵の象徴となった。これらの神格化はキリスト教にとり入れられてダニエルのテトラモルフtetramorph (《ダニエル書》7 章参照) のような表象に用いられた。

王冠をかぶったライオン

中世になるとライオンはキリスト自身の象徴とされるようにもなる。なぜならキリストは,しっぽで足跡を消すライオンのように神性を消して人間となり,慈悲に対してはつねに目をふさがず,ライオンの子のように 3 日目に復活したからだとされる。また騎士たちが冑にこの獣を彫り込んだのは,たとえ戦死しても魂だけはキリストに救済されることを願ったからだといわれる。しかし半面,イングランドやスコットランドの獅子章はライオンのたけだけしさと強さを象徴したものである。それによりイギリス自体を戯画化する際にも王冠をかぶったライオンの姿が用いられる。聖人の図像ではヒエロニムスとともにしばしばライオンが従順な下僕として描かれる。これは修道院にはいりこんだライオンをこの聖人がもてなし,とげを抜いてやったという伝説に由来するものである。
荒俣 宏(平凡社世界大百科事典)

荒俣宏著「獅子 王権と魔除けのシンボル」を読む


ヒエロニムスとライオン


グリフィン(griffin)


鷲とライオンを合体させた怪獣であり、猛禽類の王と百獣の王を兼ね備えた、最強の動物の代表として登場した。
他の動物を襲っていたり、神の乗り物であったり、王に退治される立場で表された。
ほとんどが有翼ライオンの身体で、頭が鷲の場合とライオンの場合がある。
古くは紀元前3200年ごろの南メソポタミアの円筒印章の図柄に始まる
鷲頭のグリフィンはギリシアなどの地中海方面やスキタイの地で、
ライオン頭のグリフィンはアケメネス朝ペルシア時代に流行し、東西に伝播していった。
なお、ライオン頭で鷲の身体をしたアンズ―と呼ばれる怪鳥も、グリフィンと同じころメソポタミアで登場したが、他の地域に伝播するには至らなかった。

(「オリエントの文様」」p219 用語解説by石田恵子)



Mycena Heinrich Schliemann
No 532 Golden Lion trom the same tomb Double size

獅子・ライオン


Sign of Leo, Islamic Zodiac獅子宮(獣帯)

王冠をかぶったLondonのライオン//
「ライオンを見に行く」とは、名所見物の意味だという。シェイクスピアにも用例がある由。⇒ライオン@LONDON


最古のライオンマン

Lionheaded Figurine

世界最古の動物形象による像「ライオンマン(ライオンレディー)」
※Wikipediaライオンマン
ライオンマン(英: Lion man)はドイツで発見された後期旧石器時代の象牙彫刻である。
1939年
ドイツのシュヴァーベン・アルプのローネタール(はぐれ谷)にあるホーレンシュタイン・シュターデル (en) の洞窟で発見。
世界最古の動物形(動物型)彫刻
Lionheaded Figurine ライオンの頭をもつ人間の体
オーリニャック文化
パブリックドメイン「ライオン人間」
(約30,000 BCE)
Official website of the museum〔ウルム〕
https://www.vnn.org/world/WD0401/WD01-8500.html
アフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園
サバンナからの手紙 岩合光昭・著 朝日新聞社1985年
アフリカ ポレポレ―親と子のセレンゲティ・ライフ (新潮文庫)  岩合日出子・著 新潮1990年



英雄ライオン

me 以上は西洋中心のライオンの文化史の概観であったが、キャンベルの『神話のイメージ』にもあるインドのヴィシュヌ神はいろいろな動物に変身する。ライオンや猪・・

この後は、 荒俣宏さんの「獅子 王権と魔除けのシンボル」を読むページで見たいと思う。副題は、「アジアをゆく」で、「ライオンから獅子への旅」である。
なおまた、「英雄」を中心とした ライオンに関するその他の項目は以下に続けたい


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First update 2011-03-21

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