唐草図鑑

牡丹(ボタン)

植物としてのボタン

学名Paeonia suffruticaoa Andr.

英名: tree peony
欧米ではボタンとシャクヤクを余り区別せず、
ピオニーpeonyという総称で呼ぶ

和名: 「牡丹(ボタン)」
深見草(フカミグサ)、二十日草(ハツカグサ)

中国の別称: 花王、花神、富貴花

参考書 平凡社世界大百科辞典1988刊
ヨーロッパの文様事典(視覚デザイン研究上編・刊 2000/01

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大阪府立花の文化園牡丹園にて
(2002/04/24 Photo byM)

牡丹と文化

中国

中国を代表する花として宋代の洛陽では花と言えばボタンをさした

8世紀 玄宗の開元・天宝年間(713~755)に長安での牡丹熱高まる
玄宗と楊貴妃の艶話の背景
興慶池沈香亭前の牡丹

唐の白居易の牡丹の詩

南宋の陸游 「天彭 牡丹譜」(てんほうぼたんふ)

李白(936-1012) 牡丹詩10首

日本

平安時代に渡来

菊や葵に次ぐ権威ある紋章として多くつかわれた

江戸時代イノシシの肉が食通の間でボタンと呼ばれた

[立てば芍薬 座れば牡丹]
・・ 美人の形容
茎がすらりと伸びるシャクヤク横枝が出る牡丹の姿を対比した

「詞花和歌集」(1151)

咲きしより散りはつるまで見しほどに
花のもとにて二十日経にけり


藤原忠通
(牡丹の別名「二十日草」の名の由来)
一つの花が二十日もつ…

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大阪府立花の文化園中国ボタン特別展の掲示
(初めは薬草として栽培されていたが、
5世紀から観賞用にも栽培されるようになった)

/////平凡社大百科事典より/////
文様

隋唐時代に花の観賞が盛んになると同時に牡丹文様も使われだした

唐代の花の文様の中では 牡丹は特に多く富貴の象徴とされた

同時に西アジアから伝わった唐草文様を取り入れ
「牡丹唐草文様」も作られた

「蝶に牡丹」花札にも取り入れられた

「牡丹に獅子」鎌倉時代以降好まれた組み合わせ

検索:*花札の植物(6月 牡丹)

ザクロ(石榴)文の変貌

/////平凡社大百科事典より/////

古代から繁栄の象徴とされたザクロ文

東では牡丹に、
西ではタマネギに変貌
していく

メソポタミア
ザクロは西アジア原産の花木で
種子が多いので多産・繁栄の象徴とされた

ササン朝ペルシア
ザクロとパルメットを組み合わせた文様

中国
海石榴華
陶磁器の染め付け文様
海石榴華の文様の牡丹化

ヨーロッパ
(14世紀のイタリア)
ザクロの果実がパイナップル のような形になり
周囲に別の小花を加えて複雑化

中国の模倣磁器 流行
18世紀ドイツ 絵付けの時たまネギと間違えられた
マイセン  ブルーオニオン(玉葱手)

ルネサンス期 石榴模様は
ビロードの染め織り模様として衣服家具布として盛んに用いられた


* 国語辞書: 大辞泉 牡丹(ぼたん)に唐獅子(からじし)
牡丹に獅子を配した図柄。また、取り合わせのよいもののたとえ。牡丹に唐獅子 竹に虎
ふろしきや (楽天)
「唐獅子は ライオンをもとにした想像上の動物を、 図案化したもので、いのしし(猪)や しし(鹿)と区別して唐獅子といいます。 花の王・牡丹と獅子は、豪華の象徴です。」
me(思うに現在何の象徴かと言ったらやくざの入れ墨の象徴ですね、現在??)

『昭和残侠伝』「敗北の美学」

松岡正剛:「マッチング」=「あわせ」という日本の方法: https://www.eel.co.jp/seigowchannel/archives/2007/04/news_22.html

応挙の孔雀牡丹
『 牡丹孔雀図 』 円山応挙(1733-1795)
承天閣美術館蔵(Wikipedia)大乗寺

唐獅子牡丹之図 橘天敬
https://www.t-tenkei.com/works/sisi2.html


荒俣 宏さんの解説(by平凡社世界大百科事典)
[民俗・伝承]

 西洋では古代ギリシアから中世にかけて,シャクヤクは最大の効能をもつ薬草として尊ばれた。その英名 peony と属名Paeoniaは,ギリシア神話の医神パイオンPaiヾnに由来する。パイオンは後にアスクレピオスとも混同され,この医神がシャクヤクの根を用いてハデス (プルトン) など多くの神々の傷をいやしたとする伝承を生みださせた。この貴重な薬草を採取するには,マンドラゴラと同じように,深夜イヌに紐を結んで引き抜かせる方法がとられた。またディオスコリデスの《薬物誌》に, 〈盛夏の日の出前に抜き取ったシャクヤクを,体のまわりにつるせば,毒物,魔法,恐怖,悪魔,またのろいを防ぎ,夜あるいは昼に起こる震えを伴う熱なども防ぐ〉とある。イギリスの伝説では,過ちを犯した妖精が不面目を恥じてシャクヤクの陰に隠れたため,花が赤く染まったとされ,花言葉の〈恥じらい〉もそれにちなむという。

田村 道夫(平凡社世界大百科事典)
ボタン(牡丹) ボタン (Japanese) tree peony∥Paeonia suffruticosa Andr.

  観賞用に栽培されるボタン科の落葉低木。中国西北部に自生する。茎は分枝し,古くなると高さ 3m,太さ 15cmくらいになる。葉は互生し 2 回 3 出複葉,葉柄の基部は広がって茎を抱く。小葉は卵形,上部で 3 または 5 浅裂,または分裂せず,基部は丸いかくさび状,鋸歯はない。晩春より初夏に,新しく伸びた枝の先に花をつける。花は大きく,直径 10 ~ 20cm。萼片は 5 枚,厚くて緑色,反曲し,花後も落ちずに残る。花弁は野生品では 5 ~ 10 枚,白色ないし淡紅色であるが,栽培品ではふつう,より多数で,色の変化も多い。倒卵形で先は丸くて鋸歯がある。おしべは多数,花糸は糸状,葯は細長くて黄色。めしべは 3 ~ 5 本,褐色の毛を密生し,花柱は短く,外曲する。おしべとめしべの間にある花盤は膜質,伸び出して袋状になり,柱頭部を残してめしべを包む。授粉は花粉を食いにくる甲虫による。果実は袋果,褐色の毛を密生し,裂開する。果皮は厚く内面は赤い。種子は黒色,球形,直径 5 ~ 6mm,胚乳がある。古くより中国で栽培され,前漢時代すでに根皮を薬材にしていた。
観賞用としては南北朝時代に始まるとされるが,唐代になって大流行し,おびただしい品種群が作出された。日本への渡来は平安朝である。観賞用のみならず薬用としても重要で,根の主として皮を,鎮静,鎮痛,血行障害のあるものなどに用いる。


 ボタンという名は,本種だけではなくボタン属Paeoniaの木本性の種の総称として用いられる。他の種では花盤はボタンのように伸び広がらず,肉質の隆起となって雌蕊 (しずい) 群をとり囲み,また,花は今年伸びた枝に 2 ~ 3 個つく場合もある。 P.lutea Delavay ex Franch.は花が黄色 P.delavayi Franch.は花が赤色ないし紫色である。 P.potanini Kom.はP.delavayiに似るが,葉の裂片が細い。園芸品種にはこれらとの雑種に起源するとみられるものもある。群としては,中国西北部よりヒマラヤ地方東部にかけて分布する。
草本性のシャクヤク類も観賞用や薬用に広く利用されるが,木本性のボタン類よりも広く分布している。


萩屋 薫(平凡社世界大百科事典)

[栽培と園芸品種]
ボタンは普通,シャクヤクの根を台木にして,それに 9 月上旬ころに切接ぎをして繁殖する。この台木は数年たつと肥大しすぎて,根の機能を失うので,根ぎわに土を盛って,早く穂木のボタンから自分の根を出させるとよい。苗は 10 ~ 11 月に,排水のよい肥沃な所に盛土をして植え付ける。肥料は秋と春に根ぎわにたっぷりやる。品種は花弁の数に従って,一重,八重,千重 (せんえ),万重 (まんえ) などに区別され,花色も変化に富む。開花期も普通の春咲きのほかに,冬と春早くに咲く二季咲きの寒ボタンや,春咲きより開花期の遅い遅咲きの種間雑種群がある。ボタンにはひじょうに多くの品種があるが,開花期別に代表的品種をあげると,春咲品種に玉芙蓉 (たまふよう) (桃色八重),日照 (につしよう) (赤千重),五大洲 (ごだいしゆう) (白八重),寒咲品種に栗皮紅 (くりかわべに) (紅褐色八重),秋冬紅 (しゆうとうこう) (淡紅色八重)。遅咲品種に金帝 (きんてい) (レエスペランスともいう,黄一重),金晃 (きんこう) (アリス・ハーディングともいう,黄万重) などがある。


WEB検索

牡丹(Wikipedia)
国立歴史民族博物館(千葉県 佐倉市)

「ボタン(ボタン科ボタン属)
中国原産のボタンは花が美しいことから平安時代から栽培され、
江戸時代には紅白300品種以上。
しかし黄色の牡丹は、
ヨーロッパで1800年代以降交配を繰り返し、
品 種改良されたものが
のちに輸入されてきたものです」

by National Museum of Japanese Historygoogle rank6
毎月更新される 佐原 眞さん(国立歴史民俗博物館館長)
辻 誠一郎さん(国立歴史民俗博物館歴史研究部) 他の
「くらしの植物園だより」は読み応えがあります)

財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団
浮世絵ギャラリー 【浮世絵版画作品集】 (・・!)

浮世絵版画花鳥名作撰


浮世絵のアダチ版画
葛飾北斎 牡丹に蝶・北尾政美 雨中の牡丹
石川県伝統工芸 牡丹に唐獅子

「獅子は夜に、牡丹の花の下で休みます」


https://www.rinnou.net/cont_04/rengo/2003-10.html


葛飾北斎 (1760–1849)
ボタンのサイト紹介
tree PEONY homepage牡丹のページ google rank2(Hajime Kawashimaさん)
牡丹の全て・・手入れ法・全国の牡丹園の紹介・絵画の紹介など堪能できます
牡丹(ボタン)豆知識のページには童歌も
絵画の紹介では
「石川ヨシ子(鹿島守之助氏の子)画伯が
亀山本徳寺Wikipedia)に寄進した大広間格天井画。」

https://www.kajima.co.jp/prof/culture/hontoku/index-j.html
https://www.kajima.co.jp/csr/culture/hontoku/tenjyo/ten-64-j.html
亀山本徳寺大広間格天井画(KAJIMA CORPORATION )
ハスが多いですが、白牡丹もひとつあるようですね。

(2012-01-09 リンク先不明削除)

嵯峨御所大覚寺 』(Wikipedia) の重要文化財の襖絵牡丹図の紹介

https://www.daikakuji.or.jp/bunkazai/kaiga/botan.htm
https://www.daikakuji.or.jp/kedai/meiho_d_03.html

(リンク修正2007-05-06)(リンク削除2012-01-09 delate)
狩野山楽(1559年~ 1635年)「牡丹図」
(桃山時代、大覚寺宸殿・牡丹の間の襖絵18面、重要文化財)

ボタン苗コレクション


楽天市場ボタン苗コレクション



「黒牡丹(黒竜錦)」というものもあるようです。

樹下動物文(聖樹と獅子) 唐獅子 牡丹、巻き毛のライオン
インターネットミュージアム https://www.museum.or.jp/「唐獅子牡丹」などの検索

20170730更新



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