唐草図鑑

Anthemion

[アンテミオン]とスイカズラ



Anthemion (Lotos-Palmettenfries),
Athen, Erechtheion.
AteneEretteoCapitelloIonico

me2012-02-13 「アンテミオン」については 用語事典で以下のように紹介してきました。
今回は、英語の方でWEB検索し、また、文献からももう少し追加し、植物の忍冬(スイカズラ)を見ます。

アンテミオン
忍冬の葉、またはパルメットの枝葉を様式化した 古代ギリシアの植物文様
古典主義建築が復活する18,19世紀のヨーロッパ建築 家具・装飾板に広く用いられた
  特に18世紀末この文様を彫刻した椅子が流行し、「アンテミオンの背もたれ」と呼ばれた (鶴岡真弓)

https://www.jossandmain.com/

上の説明だと、枝葉、ということで、語源としてあげられるギリシア語のアントス(花)という言葉との関連が抜けているように思える。ちなみに
『世界美術大事典』(若桑みどり監修1988小学館)には、「アンテミオン」という項目はない。 (従って、文様用語ではあるが、美術の学術用語ではないのかもしれない別の美術用語辞典もみなければならないが ⇒追記 『岩波西洋美術用語事典』にはあったのでページ末へ )
リーグルは『リーグル美術様式論━装飾師の基本問題━』 「第Ⅲ部 植物文様の始原と唐草文様」で、アルテミオンという言葉を使っていない。しかし、
『世界文様辞典』(西上ハルオ 1994 創元社)で、「古代ギリシアのこうした伝統的文様の装飾はアルテミオンと呼ばれる」として、あげている文様が、リーグルの考察の対象の主要な一部分であった。→2012k/riegl_k9.html

なお、リーグルの著書に「 花文様」(アントス文様)という言葉はあるが、その言葉を リーグルがスイカズラに関連付けることはありえない。

me 文様名には「忍冬文」 という名もあるが 、パルメットやロータスに比べ、この植物(忍冬・スイカズラ)に「宗教的なまでの意味が与えられたかどうか」ということがみえないのと、流行の時代が下がるので、もはや、なんの植物からという意味合いはなくなっている様に見え、植物のスイカズラをもとにした文様であるとは考えられない。
もっとも、Anthemionが ギリシア語の花という意味のアントスから来たということで、あらためてスイカズラの花姿を見ると、つる植物であることや、花も園芸植物となってゴージャスにみえ、香りもあり、・・
これをスイカズラというのも、文様の形としてそう名付けるという意味ではまずくはないと考えられる。

Anthemionの説明には、カッコで(ロータスとパルメットの連続したフリーズLotos-Palmettenfries)である、といった 紹介が多い。
であるから、スイカズラという植物 自体はあまり重要視されていない。
この 文様は、「パルメットまたはAnthemion」 とする紹介が多く、パルメットか区別されるものではないようだ。
リーグルはパルメット+アカントス

アルテミオンとは

WEB検索(2012年2月26日検索)
https://encyclopedia2.thefreedictionary.com/anthemion
■ McGraw-Hill Dictionary of Architecture & Construction

anthemion, honeysuckle ornament
A common Greek ornament based upon the honeysuckle or palmette. Used singly on stelae or antefixes, or as a running ornament on friezes, etc.

American Heritage Dictionary:
an·the·mi·on

A pattern of honeysuckle or palm leaves in a radiating cluster, used as a motif in Greek art.
[Greek, diminutive of anthemon, flower, from anthos.]
(art, ancient Egypt/Assyria/the Aegean Sea)
ギリシャ語 anthemonから、anthosは花という意味


■Columbia Encyclopedia: anthemion

anthemion (ănthē'mēən), commonly called a palmette, a radiating, fan-shaped ornament or motif suggestive of a palm leaf or of honeysuckle and found in Egyptian, Assyrian, and Aegean art. It was widely used by the Greeks and Romans on their buildings and on many kinds of decorative objects.


https://www.bgs.gr/

「卓越性のために努力する我々の努力を象徴するもの」


https://etc.usf.edu/clipart/
Free clipart for students & teachers!


https://etc.usf.edu/


Egyptian lotus palmette: sun and open flower


Buffalo as an Architectural Museum

Alternate name: Honeysuckle ornament
Lotus (shorter) and palmette with bottom scroll
ロータス(短い)と下部のスクロールとパルメット


https://extraordinarybookofdoors.com/

Windows and External Doorways in English Secular Architecture, 700-1800
ウィンチェスターアカンサス。


https://www.friendsalamedafreelibrary.org/

 Anthemionの起源
The anthemion is an ancient Greek design consisting of a number of radiating petals sometimes referred to as the honeysuckle or lotus palmette. The Greek anthemion is a version of a very widespread ancient decorative design derived from earlier Egyptian, Assyrian, and Aegean versions.
「花びらの放射」・・というのはどうだろうか!?


■https://www.wordpressblue.com/2009/08/david-dailey-galleries-from-the-1911-encyclopedia-britannica-public-domain/×


デビッド·デイリー:1911年ブリタニカ百科事典(パブリックドメイン)からのギャラリー


https://www.traditionalproductgalleries.com/Rinterior-interior.htm
https://www.antiques-bible.com/

Anthemion, from the Greek word for flower, is a combination honeysuckle, lotus, acanthus, or palmette decorative motif inscribed on achitecture, friezes, and later on furniture and silverware.
Originally found in ancient Greece, the anthemion motif appeared in the 18th and 19th Centuries throughout western civilization.

20151001再検索

mehttps://www.wordnik.com/words/anthemionから、

from the GNU version of the Collaborative International Dictionary of English
A floral ornament. See palmette

from The Century Dictionary and Cyclopedia n. In art and archaeology:
A characteristic palmette or honeysuckle ornament, varying in detail, but constant in type, of very frequent occurrence both in single examples and in series, in vase-painting, in architectural sculpture, in jewelry and dress-fabrics, and in all other decorative work of Greek origin from very early times, and later in ornament derived from the Greek.



スイカズラ  Honeysuckle

スイカズラ(吸い葛)
学名:Lonicera japonica
科名:スイカズラ科スイカズラ属の
別名、ニンドウ(忍冬)


Honeysuckle(ハニーサックル)は、
Lonicera(ロニセラ)やスイカズラの同義語(異表記)。
忍冬 :すいかずら、 英名:Japanese honeysuckle

Wikipediaによれば、 「冬場を耐え忍ぶ事からこの名がついた。」
こちらは蔓植物( 常緑つる性木本)というが、 しかし英語版Wikipediaの方では
低木とされているようである・・

スイカズラの植物図

152 Lonicera caprifolium L

「世界文様事典」(西川ハルオ)P32 

忍冬はスイカズラの漢名である。
日本のスイカズラと文様としての忍冬は似ていない部分が多く、 飛鳥や白鳳時代に仏教美術を通じて現れる忍冬文様は、 現実の植物よりもはるかに流麗な姿をしている。
忍冬文様の源流地は、遠く古代エジプトと言われる。それがシルクロードを通り、中国、朝鮮を経て日本に到達したのであろう、日本産の忍冬(スイカズラ)は、もともとデザインの原型になったものではない。
普通、忍冬文様と称されるものは、扇形に開いた花をつけたものを指す。
この花の扇形が誇張されるとパルメットに似てくるし、エジプトのロータスの花弁をやや丸くしたものにも似てくる。
忍冬文様が実際の植物のスイカズラから出たかどうかは問題外で架空の吉祥蔓文様となって様々な花を咲かせては、別の名前を獲得していく。

「民間伝承ではハニーサックルの枝には霊力が宿るので魔女が用いたとされる」ともある。

me実際の植物の写生であるかどうかは問題外であるというのはよいが、 「別の名前を獲得していく」というのは、少々異論のある所。
日本の忍冬文様なるものがわからないのでまた別に見ます。



ギリシアの柱頭 BC5世紀

「ハニーサックルの花は放射状に咲く。それを図案化すると、棕櫚の葉をデザインしたパルメットに類似する。 上の例はつる性であり、シュロヤシにない萼がある点で、ハニーサックルとされる

「世界文様事典」(西川ハルオ)P34より
(・・「とされる」ということで、「である」とはいっていない)

meこの図は、リーグルの美術様式論の図129である。



19世紀後半 クートニー。エドモンド天上装飾
「世界文様事典」(西川ハルオ)p35より

meここで、ハニーサックルはヨーロッパに自生するつる性の雑草で、「変貌しながら忍冬文様として日本に伝わった文様とは別に、原型に忠実なスイカズラ文様が西欧に残った」と紹介されている。(少し意味が不明になるところ)
この図のような18・19世紀近代の模様においては、スイカズラという自然の植物の描写という意味合いが加わっていることも考えられるが、原型とされるものを「スイカズラ文様」と呼ぶ事は、私はしないことにしたい。
「起源は諸説があってよくわからない」どうでもよいことにされているが、そこがリーグルの一つのテーマであったこと・・・。また、
「忍冬文様として日本に伝わった文様」が私には不明なので、
一旦ここまでですが、・・・続く・ ・・・・・

アンテミオンとは(その2)

岩波西洋美術用語事典による

「花」を意味するギリシア語anthosに由来。古代ギリシア以来行われた細いフリーズを装飾するための文様パターンで、スイカズラ、蓮、ヤシなどの植物をデザイン化している。


meこの説明だと、初めに挙げた椅子の文様をアンテミオンと言ったというのは、後世の発展的使用法であるようだ。
また、更に用語を見ていると、西洋美術大事典には、 アンテフィクサ(Antefixa) 英語版Wikipediaには アクロテリオン(Acroterion) という語があった。そちらの違いを別に見てみます
なんにしても、どの辞典でも落とされていないのは、もちろん、アカンサスと、パルメット・ロータスである。


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