唐草図鑑バナー

美術様式論


リーグル美術様式論―装飾史の基本問題」
長広敏雄訳 岩崎美術社、1970新版)

リーグル(ギリシア美術における植物文様)

10 ヘレニズム式(後期ギリシア式)
およびローマ式唐草文様

アカントス唐草


me 


「美術様式論」p271


図129 エルミタージュ蔵打ち出し黄金板
前4世紀の金打ち出し細工の縁飾り断片
(Stephani,compte rendu 1864 Taf.Ⅳ)

アカントスは240ページでのべたように、
立体的・透視図的に投影したパルメットに他ならない。
従って、それを平面的パルメットの代わりに
唐草デザインの中に代入したものとして観察しなければならない

連続波状唐草のの図形からわかることは、主幹の唐草から続いてわきの枝分かれがまずできる。それによって生じた鋭角的地間は半パルメット扇形によって充填されること。ギリシア芸術の感覚はそれを断固として求めた

アカントスを立体的芸術作品において、連続波状唐草の上に転用することは、早くから行われていた。

130 図上部
渦巻風の脇の枝分れをつけ、写実的な花文様へ流れる連続波状唐草
渦文状枝分れが分かれる点(唐草のマタ)は、二つのアカントス半花形のサヤを作っている。 (=立体的、透視図的投影の半パルメット)
1265図と同じく、パルメットの頭の先端は分厚くなっており、外方へ曲がっている。 唐草の枝は屈曲する先端の下に流れ去る。

このエネルギッシュな外への屈曲は、 ヘレニズム時代のギリシア工匠は、半パルメットの植物性要素に不自然な強制をおこなうことを考えなかったことを証明する。

次の130図と比較するとわかりやすい

「美術様式論」p273


図130 ポムペイ出土浮彫フリーズ(石彫)
(ポムペイ イシス神殿)

ローマ式アカントスの処理法
130図は発展の初期で比較的やせた処理を示す。同時代、壁画が既にアカントス唐草をきわめて豊富に用いていた

りシクラテス記念物(111図)の典型的ギリシア式アカントスに対し、ギザギザがより柔らかく丸く様式化されている

今日までの説明は非芸術的・・アテネでは先鋭的な鋸歯、イタリアでは丸い鋸歯は各々の画項が手本とする自然物の際に帰着させようとする。ギリシアではアカントス・スピノザを、イタリアでは。アカントス・モリスがとくに土産であろうと決めてしまった。

ローマ時代のアカントスを、柔らかな形に造形したのは、むしろ一つの様式変化にもとづいている。この変化は例えば小アジアの記念碑にも特徴的なのである。

130図:脇の枝が主幹部から分かれたところでは、常にアカントス半葉形がつけられていて、唯一つの葉形が描かれる。
特に重要なのは、唐草の枝分かれがない個所でもアカントス半葉形がおかれていること

間断的(S字形)波状唐草デザインで、アカントス型に変わったのは、半パルメットより、むしろハルメットの方が多い

The Temple of Isis ということだが、http://pompeiiinpictures.com/pompeiiinpictures/(: A complete photographic plan of ancient Pompeii as it is today, produced by Jackie and Bob Dunn for those as enthusiastic about Pompeii as we are.)
VIII.7.28 Pompeii. Found in portico. Now in Naples Archaeological Museum.の文様は、130図に似ているが動物が中心にいる点が違う。

「美術様式論」p275


図129の下部


アカントスはただパルメットにあらわれ、渦巻型萼と扇形との中間を充填するアカントス半葉型として、示されている。
発展史の最初、エレクテイオン113図に見たように、根本的には同じアカントスの臆病な使用である。

間断的(S字形)唐草は、古代美術の根本的な平面様式化的花文タイプに、より厳格に確保されていた。

「美術様式論」p271

.純粋唐草(平面的パルメットをもつ)の使用例はずっと長く、
帝政時代初期からは、アスペンドスの劇場、後期からはスパラトのジュピタ―神殿[131図]のものがあげられる。しかしそれに並んで、ヘレニズム時代以後、アカントス風に形作られたパルメット(立体的透視図的パルメット)が存在した。

「美術様式論」p277


図132 スパラトのオクトゴン神殿の繰形装飾
ジュビター神殿八角神殿(オクトゴン)後期帝政時代の諸建築から取材

平面的な撒水パルメットが、ふくらみ葉形(p233)をもつパルメットと交互に示されている。後者はアカントス化している。
それを結ぶ唐草線も、、純粋な幾何学化した唐草線となっている。

 

「美術様式論」p271


図133 スパラトのいわゆるアエスクラブ神殿の繰形装飾

決定的かつ重要な足跡。 花文様が膨らみ型を使命s、交互に平面的なものとアカントス的なものとを対置している。連続の唐草線には極めて注目すべき変化が現れている。
この唐草の連絡線は、もはや単に幾何学的ではなく、アカントス半葉形となっている。

外側に屈曲する尖端が消失し、葉型が根元からでも、尖端からでも━結局は曲がって隣りのパルメットの萼形を作るために━唐草風に伸びている。
ヘレニズム時代の平面的半パルメットのデザインに見たもの(125図、127図)、しかもそれが立体的透視図
アカントス半葉型は不自由となり、的唐草デザインでは半葉形の尖端が折返されたため否定され、取り除かれたものが、ここに完成している。

アカントス半葉型は不自由となり、それは唐草とともに成長し、且俺が唐草そのものの生って、結合の機能を満たすに至った

この機能は自然界では葉ではなく、花茎に現れるのだから、これによって装飾の非写実的特性が明らかに表現される。

「美術様式論」p271


134図 スパラトのオクトゴン神殿の繰形装飾

133図の繰り返し。つまり同じ文様であり、連絡線(唐草)はアカントス半葉型へ作りかえられる。
この連絡用半葉型は、一つのパルメットより他のそれへ同等に小葉化するのではなく、中間で枝分かれする。
注意すべきは、この枝分かれしたアカントス半葉形の小さな枝咲かれ二もは平面化、幾何学化、図形化の傾向がある。

「美術様式論」p271


図135 ミネルヴァ・フォールムのフリーズ 

古代ロータス花とパルメットとがともに、脇にふくらみをもつ葉形をもって示され、このパルメットは、平面形とアカントス形とを交互にリズミカルに置いている。
平面形の葉は、棍棒状の尖を生き生きと反転させることにより、明らかな写実化の傾向を示している。

唐草線(連絡線)の方は全くアカントス半葉形によって造られており、その間の唐草の茎は全く見えなくなっている。
主な葉形は、ローマ式アカントス半葉形に典型的な、尖端が外方に彎曲する方式を示しており、その下には茎はなくて、その代わりにアカントス半葉形がそれと同一の第二のものと、膨らみながら、次の花文様のための萼を形作る。
萼形からの連絡線(唐草)からも、線や帯の形の唐草茎はなくなって、その代わりに、元来はそんな役割には不適当なアカンサス半葉形が描かれる

「美術様式論」p279


図136 ネルヴァ・ファールムのフリーズ

全発展史の終点を示す

花形について言えば、一見ただ一つの文様(ロータス花文様)であり、これらが交互に少しばかりの変化を示している。 方向は一方向だけ

アカントス半葉形をとって、最上部に位置する第二ロータス花の萼葉は上で折れ上がり「、波状唐草としては動詞、下で再び植えぬ向かって進み、ふくらみをもって次の(隣の)ロータス花の萼を作ろうとしている。

すべてこれらの連絡線(唐草)を形作るのは一つのアカンサス半葉形ではなく、一群の葉形である。これらの葉の尖端はあたかもそれらが不自由ではなく、むしろ自分の存在を主張するように、外に向かって 念入りに屈曲する。

連絡線はどれも中央で枝分かれしている。そして一つの若葉を後ろ向きにたくわえる 。この若葉は124図のようには自由に運ばず、ロータス花の下部まで後方に沈んでいる。
その頭頂から来た唐草線に始まり、反対側から来た、ふくらみをもつ若葉とともに萼形をつくる。
この機能においてアカントス半葉形な唐草茎の代わりに、示されるのであって、そのような場合には枝分かれの唐草と呼ぶことができる。 それは花文様を囲む。それは花文様を書き換える。そして同時にその第二の腕を以て隣の花文様と快く結び付く

「美術様式論」p281


図137 彩描石膏壁面笹縁(ポムペイ出土)

建築上の装飾において、まだ半自然的図形の植物文様の利用には場所を与えていなかった時代に、すでに軽快で流暢な装飾的な壁画はその方向への自由が許されていた。そのの問題にとっては、ポムペイ装飾が系統的に研究され、かつ実物資料によって研究がおこなわれるべきであろう

上によって、ローマ帝政時代における波状唐草フリーズの発展についての一応の概観は、確実になされた。つまりひとたび世界帝国の政治的崩壊が起こってローマ世界芸術の統一体に突破口が生ずると、たちまちそれが独自の発展の出発点と成りえたほどにまで、西暦4世紀頃流行したこのフリーズの非写実的傾向は、著しく、発展の先取りをしていたのであった。

このあたりのポンペイの装飾を検索したが、 トリップアドバイザ―サイトのRonL40さんのポンペイ口コミ写真では、The Forum Bathsに、137図の文様があるようだ。上の部分は130図の文様に似ている。
https://sites.google.com/site/ad79eruption/pompeii/によれば、ここはAD32年の地震後に再建されたばかりの男性用の浴場でcofferingとメダリオンで ​​装飾されたアーチ型の天井をもつとあり、写真もある。
この花(アントス)文様jは、5弁花・・

『リーグル美術様式論━装飾師の基本問題━』 「第Ⅲ部 植物文様の始原と唐草文様」は以上で終わりである。
オリエントの部分が約70ぺージ、ギリシアの部分が約150ページという配分であるが、オリエントでは39図、ギリシアは92図、計131図が挙げられている。 これらは、19世紀の考古学者による実物の複写図、先行書物からの引用図がメインで、テーマは「植物唐草の発展史」であった。
ここで初めに戻ります。アンテミオン?

BACK: 10 a
ヘレニズム式(後期ギリシア式)およびローマ式唐草文様

リーグル美術様式論 目次

△ PageTop


唐草図鑑ロゴ

INDEX アカンサス ツタ ロータス ブドウ ボタン ナツメヤシ
唐草図鑑
目次
文様の根源
聖樹聖樹文様
文献
用語
MAIL
サイトマップ