中国の唐草文様
中野美代子さんの『中国の妖怪 (岩波新書) 』ですが、タイトルには妖怪などとあるので、まさか、このテーマ(青銅器の文様)を研究する本であるとは、気がつきませんでした(~_~;)
Ⅰ「妖怪との出会い」(28ぺ―ジ)と Ⅲ「霊獣と魑魅魍魎」(65ページ)、Ⅳ「妖怪と漢の文化」(38ページ)の章は省き、この本の80ページに及ぶ、Ⅱ「龍の栄光と堕落」の目次読書は、以下・・。なかでも、4~6節の「「文様の中の龍」をしっかりみてみます・・
「渦巻文様こそは雷文の起源ではないだろうか」(p60)
「雷文も巴文も卍文もすべては渦巻き文のヴァリエーション」((p66)
図25.小杉一雄氏による「雷文から龍文への還元」(「殷代文様の基調は従来 夔龍と名付けられていた空想上の爬虫類である龍を主体とする」『中国文様史の研究』・『中国の美術』)・・批判 海野弘氏『装飾空間論』(「雷文は動物文よりはるかに古い渦文からの発展とみる方が自然。雷文が縁飾りや、青銅器の地文として使われることが多いのも、中心部の宝相華や龍形よりも古い層に属していたと考えた方がよい。」=雷文から龍文への発展」)
雷文の基本モチーフのS字形・・源流の渦巻きの運動のリズム(リーグル)そのままに運動を始めるS字形に、角や足で、動物の生命力が吹き込まれる(p70)
青銅器に描かれるようになり、おそらくは鋳造の技術によって線そのものの性質に変化が生じると、龍文は、幾何学文と動物文との境界を漂いながら、分割再現の方法に身をまかせる(p71)
地の部分に小さな雷文がぎっしり詰まっているのは、「空間の恐怖」horror vacuiと呼ばれる感情による地間充填の法則のサンプルだが、それだけではない。幾何学文と動物文との境界を漂っていた龍文は、雷文の波の間から、神聖な妖怪の顔面をはっきりと表したのである
その神聖な妖怪を、後世の人の命名によって、饕餮と呼ぶ事を、私は今やためらいはしない。しかし、改めて断りたいのは、饕餮という名の妖怪が当時の人々の観念の中にいてそれが青銅器に図像的に描かれたのではないということである。
雷文の基本モチーフの中に蛇の生命力が吹き込まれて、龍の原型が図像的に成立し、おそらくそれと同時に、龍についての観念が生じたのを同じシンタックスによって、饕餮の観念もまた、図像から生まれたのである。(p71)
※分割再現とは、左右対称の側面像を結び合わせて一つの正面像を構成する装飾の方法(p56)「スプリット・リプレゼンテーション」シンメトリー(対称性)に固執する空間意識・・(レヴィ・ストロース『構造人類学』) LastModified:
2013年
更新