唐草図鑑


リボンを結ぶこと

エジプト図像とヘアバンド

me古代メソポタミアの「棒と輪」で、リボンのついた輪を見ていたのだが、たまたま「ギリシアの墓石にリボンTaeniaタエニアをまきつける」という話があり・・・ 
その言葉は、「古代ギリシアの建築要素」でもあるという・・→(こちら
エジプトの葬送のヘアバンド、ギリシアの墓石のリボン・・ということで、 ちょっとギリシアのリボンを見てみたのだが、やはり、悲しみの(?)はちまきというと・・エジプトであろうか?


ジェド・モントゥ・イウエファンフの棺上に描かれた、葬祭の時の嘆きの図 第3中間期。ライデン博物館蔵 ヴェルブロウク・バントの素描による  図は、『エジプト神話の図像学 』p173より
クリスチアヌ デローシュ=ノブルクール (著), Christiane Desroches Noblecourt (Wikipedia


この本の表紙の図自体が、登場人物二人ともはちまきをしている
右はヒョウの毛皮をまとった後継者・・ずいぶん長く垂らしている


ハトホル Wikipediaであるが、
確かにはちまきをしている図像が多い・・・が、いつもとは限らない
この場合首のメナトの形が気になる・・しかもメソポタミアの神の表象に
似たマークも首の後ろに垂れている 
ネクタイの一種的な図像である。 →メナト、ネクタイ


他にGoddess HathorView on black

イシスもまたはちまきをする神だ



図説 エジプトの神々事典 』(河出書房新社) ステファヌ ロッシーニ , リュト シュマン=アンテルム (著), 矢島文夫, 吉田 春美訳p173
シュウのはちまきは標識をつけるためのもののようで、そのヒエログリフにもある。

『エジプトの神々事典』(河出書房新社)p162
セシャトのはちまきも標識をつけるためのはちまきのようだが、ヒエログリフにはない。この事典の64の神々の図(イラストbyステファヌ・ロッシーニ)で、はちまきをしているのは8、他に違う形のヘアバンドをしている神も入れると15で、4分の1以下。 とくに重要であるのは、以下の「伝統的なヘアバンド」をまいている女性の頭をもつ蛇であろう。

p11 メルセゲル
「われは、静寂を愛する者、われは、西方の貴婦人」
ネクロポリスの住民である、女性の頭を持つ神。

この蛇は時に有翼で、女性、蛇、禿鷹の三つの頭を持つこともある。更に、蛇の頭を持つスフィンクスの外観をとることもある

me ところではちまきをしたメジェド(medjed)なる神(?)がいるということで、 一応WEBと本を検索してみたが、なかなかないようです・・djed(ジェド)に関わるものか?

WEB検索のおまけ:頭痛はちまき (古代の鉢巻の医療)


Taenia とは・・

http://kotobank.jp/によれば、
(古代ギリシアの)細い髪ひも, ヘアバンド, リボン, はち巻き.〔建築〕タエニア《ドリス式エンタブラチュアのアーキトレーブとフリーズの間の平縁(ひらぶち》.

『イメージ・シンボル事典』には、項目なし

リボンribon

1.褒賞、卓越を表す
2.太陽光線を表す
パウサニアス10,35は「リボンを結ばれた古代の立像」のことに触れて、「これはデメテルの祭儀に属するものだ」と述べている
3.華やかな色のリボンは「邪眼」や災いに対する魔よけとなった
4.青いリボン、5.赤いリボンの表すもの・・(略)
6.むすんだリボン:友愛を表す

2番とすると、冥府に住まうことになったわが娘ぺルセポネへの嘆きであるのか??・・これだけでは不明であるが・・
立像に巻きつけるというと、蛇に巻かれた神の像(アイオン)が浮かぶ・・さて、 『世界シンボル事典』には、 リボンの項も輪の項もないが、

(p61-63)先史時代の巨石墳墓にはしばしば同心円状の模様が刻まれているが、この「環状の波紋」は、死者が死の海(来世)へと沈んでゆくこと、あるいはまたそこから奇跡的に浮かび上がってくることを表し、死と再生を象徴的に示唆していると思われる

meなかなか秀逸印象的な表現!
冠(王冠)はどちらの事典にもあり・・・まずは、もう少しじっくり 『イメージ・シンボル事典』から

『イメージ・シンボル事典』(大修館書店)
garlandと wreathの訳は両方とも、花輪となっている。

garland花輪

p273
1.豊穣を表し、プロメテウスが鉄の輪で縛られたことにちなんで、古代人は身につけたといわれ(⇒ring),そこから征服と勝利の象徴となった
(指輪を身につけた最初の人=プロメテウスという。プリニウスはこの説を採用しない、とある。)
2.名誉ある選択を表し、ローマでは祝祭日に市門に飾る。
3.豊穣と繁栄の象徴
4.結婚と死に関連する、花嫁の持ち物。ローマでは生贄となったものの頭に置かれ、また白い紙で作ったgarlandが教会に飾られると、処女の埋葬を表した。 白い花嫁衣装と対照的に、悲しみの象徴である。(『ハムレット』5-1参照)
5.宇宙と二元性も輪のように結合し、統一性があることを表す。
6.勝利者も捕虜も、頭をgarlandで飾る。
7.魔よけとして使われる。ローマでは、菩提樹の樹皮を紐にして結んだ花を身につければ、祭日に飲みすぎても酔わない。中世ではパセリとヘンルーダのgarlandを悪霊よけとして友人に贈った。8.⇒wreath

『イメージ・シンボル事典』(大修館書店)p701

wreath花輪



5.再生(死に対する勝利)、記憶を表す

『イメージ・シンボル事典』(大修館書店)

burial埋葬

15.葬式用の花輪は、死者の魂を「つなぎとめ」て、死者が未練がましくこの世に戻ってこないように今日でも墓の上に(またはその近く)に置く。
そ れは死出の旅に出る魂を慰める副葬品の一つの名残かもしれない。 

『イメージ・シンボル事典』(大修館書店)p155

crown王冠


6.死を表す。不死を表す。葬式の王冠」corona sepulchalisは死者の祭儀に用いられた。いのちの冠a crown of life
13.王冠の種類 ・・「小塔の冠」都市(母親のシンボル)の守護者としての大地母神の被る冠、ローマでは「城壁の冠」corona muralisは、包囲した町の城壁を最初に登った者に与えられた
me死も不死も表すことに対し、解釈をしない、これも印象的な表現!(σ(^^ゞ「死と再生」という対語を聞きすぎるのでブレーキを踏んでいる)

Diadems in Ancient Greece

「Diadems in Ancient Greece and Egypt After Alexander the Great」?
http://barbaraanneshaircombblog.com

meディアデムについては、別に(「棒と輪」の方で)みることにし、 ここで、リボン、タエニアにもどります 

タエニアtaenia

古代ギリシア人と死 』ロバート・ガーランド著晃洋書房 、2008.10.( p.134-135)

最も一般的な墓の装飾法は、幅ひろの飾り帯すなわちリボン(taeniai タイ ニアイと呼ばれた)を墓碑に巻きつけて、両端が垂れさがるかたちの飾り結び ないし蝶結びにするものであった

図の例が載っているページ http://www.history.ccsu.edu/

http://www.travel-to-thessaloniki.com/

「ガーランド」


Funeral scene, white-ground lekythosパリ 小宮殿
a funerary stele Attic white-ground red-figured lekythos,
late 5th century BC.

Dexiōsis (handshake) scene; in a funeral context, as is the case here,
this solemn gesture represents a farewell.

この葬儀の握手シーンの後ろでリボンが垂れているようですが・・しかし、これらはただの布切れのリボンでなく、もっと手の込んだガーランドでしょうか・・ 花綱と訳すべきものにかわるまえのもののようにも見える・・


Tomb scene Petit Palais ADUT00355
http://www.petitpalais.paris.fr
Funerary scene: a woman (on the right) offers a crown to a young boy (in the middle, perhaps the departed); a young warrior with cloak and petasos stands on the right. Attic white-ground lekythos, ca.440–430 BC.
お墓の前でを渡しています

Visiting grave BM D73
Visiting grave BM D73 n2
Woman decking a gravestone with garlands.
Attic white-ground lekythos.
between 420 and 410 BC大英博物館蔵
※Wikipediaの説明がガーランドになっています

Woman plemochoe Louvre L110

ここ、後ろは普通にガーランドの垂らし方になっているようです
(下の関西にあるローマ風ガーデン装飾参照)




Hero cult Louvre CA308
ルーブル美術館蔵
Hero cult (?) ; epitaph dedicated to Oedipus on the stele.
Side A of a lucanian red-figure pseudo-panathenaic amphora, ca. 380–370 BC. From Apulia
こちらはエピタフに、確かに「リボン」を巻いているようです

meいろいろ検索してみて、最後に心ひかれたAngel of griefを出しておきます。そのバージョンに、この天使が手にリースを持っているものもあった・・
(→今まで見てきた、天女のもつ輪はこちらで確認)


Emelyn Story Tomba (Cimitero Acattolico Roma)



Angel of Grief, a 1894 sculpture by William Wetmore Story
which serves as the grave stone of the artist and his wife
at the Protestant Cemetery, Rome.
photo by Einar Einarsson Kvaran aka Carptrash 17:52, 7 August 2006


meこの検索で他に目にとまったものは・・・

http://www.waseda.jp/prj-med_inst/bulletin/bull07/07_06tan.pdf

「具体的な功績を称える役目は墓碑銘は負っていない。」


「結ぶ」

meエジプトの神の図像は、その神の標識を頭に抑えておくといった実用性を多少持っていたということをみたが、巻きつける、あるいは、結ぶ(という日本語)、「イシスの結び目」、 ・・・さらに、「タイ」ties for ceremonial girdles儀式の帯の結び目まだいろいろある ⇒チェト, 「メナト」に続く・・


Tijet

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