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蜘蛛(クモ)の図像の歴史・文化

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中国でクモは「喜子」などと呼ばれ、クモを見ることは吉兆とされるというのには驚いた。クモの糸でブラさがると言えば、スパイダーマンのイメージが強いが、芥川龍之介の短編は、なにを参考にしたのか、『イメージ・シンボル辞典』にも「クモの糸」は、天と地をつなぐものであるという。

形・イメージ (文様/文化/象徴)

クモ

『中国シンボル・イメージ図典』

甲骨文字にすでに「蜘蛛」にあたる字がある。 (※?)

道家の古典『抱朴子(ほうぼくし)』に古代人が蜘蛛の巣をヒントに魚網を考え出したとある。
漢代の『易林』によると、蜘蛛が網を張るところを見れば旅に出てよい知らせとした。 

蜘蛛を知恵ある生き物と称えることが多く、唐代では壁に糸でぶら下がる蜘蛛を吉兆と見ていた
幸運が天から降ってくるという故事がいろいろ『採蘭雑志』に載っている。
この種の話が信じられて蜘蛛は、「喜子」「喜母」「喜虫」とよばれた。 

唐代には、願い事がある時には蜘蛛の絵を壁など掛ける風習が流行った。
現代でも吉兆の印として、網から糸にぶら下がる蜘蛛(喜従天降) を見て戯れる子供たちの図が親しまれたり、文具や便箋などに蜘蛛と網の模様が描かれたりすることが多い。  

しかし、蜘蛛を邪悪とみる時もある。網を使って獲物を生け捕りにする習性が嫌われ、悪知恵の象徴とされた。

出典:王敏/梅本重一編『中国シンボル・イメージ図典』 東京堂出版(2003)

(※)meこの件はどうなのだろう。蟲はよしとして。
konkinbun.png(1543 byte) 「昆」←金文 http://hccweb6.bai.ne.jp/~hgd17901/musi.html

クモ 蜘蛛

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クモ(蜘蛛、英: spider) Araneae

me  「ほとんどのクモは“益虫”なのに… みんなに嫌われてしまう不憫な虫。」と殺虫剤の会社のサイト(※)にある。
アラクノフォビアという程ではないが、細かく見たくないので写真は出しません。m(__)m
https://www.earth.jp/gaichu/

「喜蛛下垂」「喜従天降」

出典:『中国シンボル・イメージ図典』p46

アラクノフォビア (Arachnophobia) クモ恐怖症、クモに対する異常な恐怖感を抱くことを指す。

クモの生物学

https://en.wikipedia.org/wiki/Cicadaクモ(蜘蛛、英: spider)は、節足動物門鋏角亜門クモガタ綱クモ目(クモもく、Araneae)に属する動物の総称

クモは糸を出し、鋏角に毒腺を持ち、それを用いて小型動物を捕食する、肉食性の陸上節足動物の1群である。糸を使って網を張ることでよく知られるが、実際にはほぼ半数の種が網を張らずに獲物を捕まえる。人間に害をなすほどの毒を持つものはごく少数に限られる。
昆虫や多足類などの陸生節足動物と同様に「虫」と扱う動物群の一つであるが、六脚亜門に属する昆虫とは全く別のグループ(鋏角亜門クモガタ綱)に属する。

me簡単に言うと昆虫は脚が6本、蜘蛛は8本。

なぜ人は蜘蛛を嫌いなのか? クモが苦手な人 クモが嫌いな人の多くは「予測のできない早い動きや足の多さ」などを嫌いな理由としてあげます。 つまり、予測がつかないことに関する拒否反応が強いと解釈できます。

分類学

かなり古くはクモも昆虫類として扱われたことがあり、今日でもクモは昆虫類であると誤解されがちであるが、クモ類は昆虫類とはまったく別の仲間である。体の各部の構造を比較してみると、クモは昆虫類でないことがわかる。

 クモ形類の先祖は、古生代カンブリア紀に栄えた三葉虫であろうといわれている。その三葉虫が変化して、のちにいくつかの目(もく)を派生し、その一つの枝が真正クモ類となったという

日本蜘蛛学会
クモはどうやってコミュニケーションを取るの? 子ども科学電話相談 https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/
https://kaiun.sseikatsu.net/spider/

人間の文化


『図説世界シンボル事典』

クモは多くの民族の神話にネガティヴな意味を持つシンボルとして登場するが、時には西アフリカのアナンシ(( Anansi)アシャンティ人の神話に登場する神話や昔話に登場するクモの名)のように、両義的な性格を持つクモは「トリックスター」となることもある。

キリスト教のシンボル表現では、クモは「善良な」ミツバチと対をなす「邪悪」な存在であり、たいていは人間から血を吸いつくすような、罪深い衝動を表す。
しかし民衆の間では、クモは魂を運ぶものとみなされ、夢を見ている人の魂は、クモの姿になって閉じた口から外へ出、そしてまた戻ってくると信じられていた。

クモを忌み嫌う表現は、J.ゴットフェルフ(17978-1854) の小説「黒い蜘蛛」にも表れているが、
アルプス地方には、背中に十字模様がある事から、祝福された生物と考え、幸運のシンボルとみなして殺してはならないとする地域もある。
古代中国でもクモは吉兆で、たとえば行方知らずの息子の帰還といった幸運が近々舞い込むしるしとされた。クモが糸を出しながら巣から降りる図は、幸運が天から降ってくることを象徴するものとされた。

オウィッディウスの『変身物語』には、いつも公正な女神アテナ(ローマ神話のミネルヴァ)がリュディアの王女で織物の名手として知られたアラクネ(ギリシア語でクモの意)の技量のすばらしさに嫉んで、アラクネを最も嫌いな動物、すなわちクモの姿に変えてしまった、

ドイツ語の慣用表現では、糸紡ぎはクモのイメージと結びつけて用いられる。
法螺を吹く=糸を紡ぐ(sein Gam spinnen)
妄想をたくましくする=頭の中で糸紡ぎ(Hirngespinst)
陰謀をめぐらす=紡ぐ(spinnen)

出典:ドイツのハンス・ビーダーマン著『図説世界シンボル事典』

Velazquez-las hilanderas
ディエゴ・ベラスケス画『アラクネの寓話(織女たち)』
(1657年頃)マドリッド、プラド美術館所蔵
Diego Velázquez (1599–1660) Title Spanish: Las hilanderas o la fábula de Aracne

クモ図(背中に十字)

ミシシッピ文化(Mississippian culture)は、およそ800年から1500年まで、現在のアメリカ合衆国中西部、東部および南東部の文化.ヨーロッパの銅器時代に比定される。

クモの巣(紋章)


cobweb (紋章)
『イメージ・シンボル事典』(p135図)

イメージ・シンボル事典

[神話]
a.ギリシア:機織競争、アテナとアラクネ、オピディウス『転身物語』6,1‐145)
b.(キリスト教)エジプト逃避、聖家族、洞窟
c.クモはアイルランドの木には巣をかけない;聖パトリック(アイルランドの守護聖人)が敵意を持っているので
紋章
知恵、慎重、労働
[文学]
a.イエ―ツ: 愛はそれにふさわしい苦痛を見つけ出すっクモの目を持っている。それゆえクモは、選択と偶然のもつ残酷さを表す。
b. T.S.エリオット:墓石に巣をかけるところから、人の心を慰める忘却 を表す
c.D.トマス:大地を罰する暗黒の詩人である自分のこと
連結語
「クモの巣」:天と地をつなぐもの、キリストの昇天に関連 「クモの巣」:神秘の中心とそこからの展開、幻影、迷宮
あてにならないもの、儚いのぞみ(「ヨブ」8,14)弱者に厳しく強者に甘い掟(「尺には尺を」)、暴力的な悪(「イザヤ」59,5∻)
[民間伝承]
a.もし生きながらえて栄えたいと思えば、クモをいかしておかねばならない。
b.小さい(特に赤い)クモ=金グモ(money spider)は金銭的な幸運をもたらす。
c.雨と関連がある:殺すと姉になる(クモに関連する魔女達が天気と風を司っているため)
d.ミツバチが蜜を吸い取る場所で、クモは毒を吸い取る(諺)

『イメージ・シンボル事典』(アト・ド・フリース原著 山下主一郎 大修館書店創元社1984)

虫の図像学

次の虫としては、蜂(ハチ)へ。