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「寓意と象徴の女性像」


「作品解説」を読む

me全集 『美術の中の裸婦』1980集英社刊)の第7巻 「寓意と象徴の女性像 Ⅰ」に挙げられている作品(70)を解説を読みつつチェックします。

※若桑みどりさんの総論「太陽を持つ女」の目次読書はこちら。
巻末エッセイは横山紘一 「裸形と着衣のシンボリズム」
他の執筆者は 中山公男 森洋子
(なお,第8巻 「寓意と象徴の女性像 Ⅱ」は中山公男・高階秀爾監修で
総論は中山公男「美しき禍い」で、テーマが違うので今は取り上げません。)


赤字の作品解説は若桑みどりさん。
番号まで赤いものは更にチェックしたもの。
黒字はその他私が親しんできた絵。

●徳と罪と快楽

(図版1~18 )
1 クラナッハ(子) 慈愛 (ハンブルク美術館)
2  クザン 慈愛 (モンペリエ ファーブル美術館)
3  サルヴィアーティ 慈愛 (ウフィツィ美術館)
4  ピカソ 鏡の前の若い娘 (ニューヨーク近代美術館)
5 メムリンク 虚栄
10 ヴァザーリ 忍耐 (ピッティ美術館)
12 ベルニーニ 時に暴かれた真実 (ボルゲーゼ美術館)
13 モロー 一角獣 (ギュスターブ・モロー美術館)※
14 ボッティチェリ 真実 (ウフィツィ美術館)
15 ヴァザーリ 無原罪受胎 (オックスフォード アシュモール美術館) ※
16 ボッス 快楽の園

●愛と時と運命

(図版19~26)
19 テイエボロ ヴィーナスと時 (ロンドン ナショナル・ギャラリー)
20 プッサン 時と真理 (ルーブル美術館)
21 ルモワーヌ 時に救われた真実 (ロンドン ウォーレス美術館)
22 ティツアーノ 天上の愛と地上の愛 (ボルゲーゼ美術館) ※
24 ブロンズィーノ 愛の寓意 (ロンドン ナショナル・ギャラリー) ※
23 フラナゴール 愛の泉 (ロンドン ウォーレスコレクション)
25 ヴ―エ 希望と愛と美に打ち負かされる時 (ブールジュ ベリー美術館)

●学問と芸術

(図版27~43)
27 パルドゥング・グリーン 音楽 (アルテ・ピナゴーク)
28 ランフランコ 音楽 (ローマ 国立古代美術館)
29 スプランゲル 絵画、彫刻、建築 (グルノーブル美術館)
30 ドロラッシュ 美術の戴冠 (パリ エコール・デ・ボーザール)
31 クールベ 画家のアトリエ (ルーブル美術館)
33 サン=トゥール 美の勝利 (ジュネーブ 美術・歴史美術館)
36 ポライウォーロ 文法(シクストゥス四世の墓 部分)
やン・ブリューゲル及びルーベンス 五感(プラド美術館蔵)
43 ティツアーノまたはジョルジョーネ 田園の奏楽 (ルーブル美術館)

●宇宙と四元素と四季

(図版44~62)
44 ルンゲ 朝 (ハンブルク美術館)
47 ミケランジェロ 夜 (メディチ家墓廟) (フィレンツェ サン・ロレンツォ聖堂)※
50 デルヴォ― 夏 (ブリュッセル 個人蔵)
52 カロン 冬の凱旋 (パリ 個人蔵)
55 クラナッハ(父) 黄金時代 (オスロ 国立美術館)
ヤン・ブリューゲル及びヴァン・バーレン 四元素 (リヨン美術館蔵)
57 ツッキ 銀時代 (ウフィツィ美術館) 

●様々な寓意

(図版63~70)
63 フォンテーヌブロー派 平和 (フィレンツェ 国立パルジェロ美術館)
※この巻のカバー表紙絵である)
66 ティエボロ スペイン王国の栄光 (マドリード王宮)
69 ツッキ アメリカの発見 (ボルゲーゼ美術館)
70 ジョルジョーネ 嵐 ヴェネツィア (アカデミア美術館)

●参考図版
Ⅰ 月―ルーナ
Ⅱ 金星―ヴィーナス
Ⅲ 執拗な青春
Ⅳ 運命
Ⅴ イーテル・ブリューゲル/邪淫
Ⅵ 潔白を救う時(ブロンズィーノの下図によるタピストリー) ※

me

 

Paolo Monti - Servizio fotografico - BEIC 6356397
12 ベルニーニ 時に暴かれた真実 (ボルゲーゼ美術館)

抽象的なアレゴリーの難解さに終止符を打って、大衆にもわかりやすいイメージを作り出したのが、バロックの特色である。ベルニーニはその代表者であったが、多くの点で16世紀の寓意の伝統を受け継ぎ、生き残らせている。リーパの1603年版の木版の挿絵はこの図に極めて似ている。ベルニーニがこれほど忠実にず蔵書に従っていたことは興味深いが、実際に表現された肉体そのものは、バロックらしく感覚的で生々しい。 (p93)

meわたしはこの、「バロックらしく感覚的で生々しい」→仰々しいベルニーニの彫刻はどうも好きになれないのだが・・

 

TIEPOLO - An Allegory with Venus and Time
TIEPOLO - An Allegory with Venus and Time
19 テイエポロ ヴィーナスと時 (ロンドン ナショナル・ギャラリー)

ティエポロは最後のルネサンス画家といわれる。16世紀のヴェネツィア画派の伝統が強く生き残っている。
明から暗へのジグザグ型構図の映画的な新しさなどは、高く評価できる。
「時」さえも愛に屈してしまうという自由な解釈は16世紀には考えられなかった。(p96)

me予期に反して、これはサイズの大きな絵画であるようだ。(292.1×190.4㎝)

 

Simon Vouet - Saturn, Conquered by Amor, Venus and Hope - WGA25377
25 ヴ―エ 希望と愛と美に打ち負かされる時 (ブールジュ ベリー美術館)Simon Vouet 1590-1649)

この図像はペトラルカの名高い『凱旋』の長い伝統から派生したものと思われる。
「時」を打ち負かすものは「永遠」るまり神だけだったのだが、ここでは逆に「時」が「愛」や「名声」に打ち負かされていいる。
個人的に彼の敵であったプッサンの「時と真実」の図像(図20 すべての真実は時のみが知るという思想を表す)と比較すると、ここに図らずも両者の対決が見られる。(p100)

me

 

Lucas Cranach d.Ä. - Das Goldene Zeitalter (Alte Pinakothek)
56 クラナッハ(父) 黄金時代 (アルテピナゴーク)

高い壁によって保護された楽園で、幸福に生きる
中世末期に愛好された「愛の園」の図像に近づた情景・・
北方で初めてヴ―ナスを描いたといわれるクラナッハの最初期の作品(1509)は、デューラーのエバ(1507)よりもはるかにヒロイックで逞しい裸女であった。⇒年を重ねるつれて、デリケートで少女のような裸体へ変えていった。(by森洋子p109)

me

 


63 フォンテーヌブロー派 平和
 (フィレンツェ 国立パルジェロ美術館)
School of Fontainebleau ※この巻のカバー表紙絵である)

「平和」は非常い美しい女でなければならなかった。軍人である男たちが美しい女の魅力によって戦争を終結させ、彼女の力に屈する事によって暗示される。人の心を静めるオリーブの小枝だと平和のシンボルである一羽の鳩を手に、人を魅了する帯を締めて、武具の上に座っている。

マニュエリストらしくラファエロの《ラ・フォルナリーナ》を踏襲し、プリマティッチオ風の彩色を加えた典型的なフォンティーヌブロ―派で、その顔には独特の宮廷女官風な冷たい繊細さがある。(p111)

me「宮廷女官風」(笑)・・

 

Giorgione, The tempest
70 ジョルジョーネ 嵐 ヴェネツィア (アカデミア美術館

この絵の主題は書き残されていない。
この絵程様々な解釈を許した作品もまれであろう。
最近E・ヴォントがこれを「慈愛」、「力」、そしてて「運命」の寓意と解した。
M・プレイオットは、字義通りの「慈愛」をジョルジオーネが描くはずがないので、この人物は生命を創造する「機会(カイロス)」または「運(フォルトゥーナ」で、若者は、万物を支配する「永遠(アイオン)」だろうという。「機会」と永遠」とは、古代人がもっていた「時」の二つの対立的な概念である。
確かに子を産む女と、円柱を破壊する男とは、宇宙的な時間の破壊と生成の寓意といえないこともない。これらの解釈は依然として過剰解釈の誹りを免れないだろう。

しかし、この絵が伝えるもっとも直接的で真実なイメージは、悠久の自然の怪しい美しさとその力、その中に投げ出されてむしろ脅えている人間(母と子という根源的な人間存在のイメージ)と、破壊された文明のそれであり、この三者のイメージが強く訴えれば訴えるほど、様々な哲学的な解釈をこれからも生み出し続けるに違いないのである。 (p113)

me名文である!
私には絵画の鑑賞能力がないと思わされるのだが、若桑さんの作品解説を読んで、非常に面白く、尊敬の念を覚えた・・
しかし、この辺で戻ることにしたい。
若桑さんの怪物論である→

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LastModified: 2019年

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