唐草図鑑
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中世の美術

ユトレヒト詩篇
(Utrecht Psalter)

 

エミール・マールの『ロマネスクの図像学』
第1章の最後

第1章の最後のまとめ(p74-75
写本挿絵の十二世紀初頭のモニュメンタルな大彫刻に対する影響はきわめて深いものであった。
カロリング時代においてもすでに、象牙彫刻は写本挿絵に絶えずその発想元を求めていた。
9世紀の多くの象牙彫刻は謎であった。ある時、これらの象牙彫刻は、ランス派の「ユトレヒト詩編集」の挿絵の模刻であることが判明し、謎が氷解した


 註には、出典: Histoire Générale des Arts Appliqués à l'Industrie – 1901・とある。  by Émile Molinier (1857–1906)
(Wikipediaでは中世研究の第一人者だった兄 Auguste Molinierのページに載る)、            論文 Available on Gallica



E. T. de Wald, The Illustrations of the Utrecht Psalter (facsimile), Princeton 1932, plate 52
https://warburg.sas.ac.uk/

(p75で)ポール・デュランがそれを示したという話

パリ国立図書館蔵のシャルル禿頭王の豪華本を装飾している象牙彫刻
「荘厳のキリスト」の下に、一人の天使が小さな霊魂を抱いて寝台に腰を下ろし、この霊魂を二頭の獅子の攻撃から守っている。 そのまた下では、槍と矢で武装した兵士が子どもの形で示されたこの霊魂を驚かしているようである。
そのもう一つ下では数人の男たちが穴を掘っており、別の男たちがこの穴にまっさかさまに落ちている。
これは、詩篇第57番の挿絵をそのまま映しているにすぎないことを示した

この発見は他の多くの象牙彫刻の研究に道を開いた

ユトレヒト詩篇

コトバンク: 世界大百科事典 第2版 ユトレヒト詩篇とは
フランスのランス近郊オービレールHautvillersで,820‐830年ころ制作されたと推定される挿絵入り写本。
いわゆる〈ランス派〉写本の一つ。
現在ユトレヒト大学図書館に所蔵。
豊富な挿絵は羽根ペンによる素描で,テキストを逐一,忠実に図解している。
古代風の自然主義的風景や,躍動する人物像などの緊張とスピード感に満ちた描写は,カロリング朝美術の傑作に数えられる。 (Who?)

ユトレヒト大学(Universiteit Utrecht)

オランダのユトレヒトにある公立大学。1636年に設立
1584年に設立されたユトレヒト市図書館は、大学の設立と一体のもので、オランダ北部では最大規模

(p77)第1章の締めくくりの文(by エミール・マール)

我々の研究対象は図像であり、とりわけ十二世紀の図像の起源と考えられる写本挿絵を通しての図像研究である。 当時写本挿絵は、芸術家たちに宗教的主題を伝達するとともに、 優雅な輪郭線や繊細な鑿使いを示唆するというこの上もなく重要な役割を果たしていた。
とはいえ、モアサックやヴェスレ―の扉口に輝いている壮大な美や崇高な感情を彫刻家たちが見出したのは、けっして写本の中にではない。 この偉大な感性はただ彼らの深い宗教感情からのみ発するものだったのである。

  いやぁ・・、この最後の言葉はずいぶん格調高いですね(~_~;)

 

カロリング朝 美術Carolingian art

カロリング朝(751-987)美術
フランク王国第2の王朝,特に 800年に神聖ローマ皇帝となったカルル大帝 (シャルルマーニュ) の宮廷を中心として8世紀より9世紀末にかけて栄えた美術。
「カロリング・ルネサンスと呼ばれ,キリスト教を主体として古代およびビザンチンの文化を復興させようとした。」 (コトバンク:ブリタニカ国際大百科事典 の記述)


  まだ1章目が終わったところ
→第2章の図版は *エミール・マール『ロマネスクの図像学』【上)目次から
→→『ロマネスクの図像学』(下)を読む 

神話学のアウトラインギリシア神話の美術研究に続く・・

*関連: 越宏一著「ヨーロッパ中世美術講義」 口絵7

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