唐草図鑑
聖樹聖獣文様

西欧初期中世の美術

小学館世界美術大全集(1996)

世界美術大全集 西洋編8・ロマネスク
責任編集/長塚安司 1996 http://www.shogakukan.co.jp/

内容紹介
教会堂の内部を「神の国」とするなら扉口はまさに「天国の門」とい える。サンタマリア大聖堂など個性的建築、彫刻はオータンのサン・ ラザール大聖堂の〈エヴァ〉、絵画はサン・サヴァン聖堂の〈バベル の塔〉など。

 Amazonで古書が4000円程度で買えるのだが、あえて図書を利用。この全集を揃いで買うなども、魅力であるが、禁忌事項。・・期限を設けて読み切るのが課題である。20190213
→目次読書後。画像をよく見るため、単品購入。

国立国会図書館サーチ
安發和彰(あわかずあき)1952~
五十嵐見鳥 1938~
近藤フジエ 1945~
長塚安司 1936~
馬場雅美 1937~


目次読書

序論 紀元1000年を過ぎて

長塚安司 p9 

ヨーロッパが白い衣を着ける時/世俗世界の歴史/教会世界の歴史

 「キリスト、そして使徒たちでさえが足を踏み入れたことのないヨーロッパ大陸」「現実主義者である西欧人たちが、現存する聖体に強い憧れをもった」(8‐p13)という箇所に、まず、なるほど・・

教え導くことと、神を瞑想し祈ることは、相反することっとはいえ、いずれも修道士の仕事であった。美術も精神と快楽という根深い二元論的両面をそろえている。(8‐p16)

第1章 ロマネスク美術の形成

長塚 安司 p29


ロマネスク美術の背景―ロマネスク美術を担うもの
時代の範囲
研究史としての歴史
形成要素
オットー朝美術―オットー朝の歴史
建築
壁画
写本挿絵
象牙・金属工芸
ロマネスク美術の始まり
南方の最初のロマネスク美術
トゥルニュのサン・フィリベール修道院聖堂
ウィンチェスター派

 以下、「ロマネスクの背景」部分のみ抜き書き

ロマネスク美術を担うもの
匿名性、神への信仰を求める時代、日常を超越した神の家なる聖堂の装飾 建築が芸術の土台

時代の範囲
初期ロマネスク(950~1060)・・ロマネスク要素はオットー朝時代にすでに認められる。
盛期ロマネスク(1060~1150)・・サンドニ、シャルトルのゴシック
後期ロマネスク(1150~1270)・・ イタリアでは残っていた
(8‐p30)

研究史としての歴史
19世紀初めに誕生した用語(ローマ建築から派生した稚拙な様式);
アルシス・ド・コーモン『考古学入門』(1850~62)
20世紀初めに、中世美術こそヨーロッパに生まれ完成したヨーロッパ美術そのものと理解された。
アンリ・フォション『形態の生命』(1934)
ルイ・ブレイユ『キリスト教美術―起源から今日に至るその図像的発展』(1928)
エミール・マール『フランスの12世紀の宗教美術』(1953)

形成要素
前時代のカロリング朝からの伝承(帝国美術、中央集権的)を受け継ぎながら、本質的に異なる。 ロマネスクはローカル美術(土着的な抽象的造形)

古典的な立体造形と土着的な平面的抽象の世界が融合したともいえるが、独自のものを想像した。基本は平面性で、具象的表現の単純化、図案化。(8‐p33)

825年 画像崇拝を承認する決定(@パリ) ・・無知無教養の者に聖書とキリストの物語が現実であったことを悟らしめるもの・東方教会(ビザンティン教会)とは異なる画像肯定の解決策。

黙示録の思想の広がりが土台となったロマネスク美術の形成。

様々な源泉:
建築では半円形アーチ、トンネル・ヴォールトを広めた
彫刻ではヴェズレー、オータン、モワサックに集約される様式を展開
絵画では、サン・サヴァン聖堂、ベルゼ・ラ・ヴィル聖堂、サンタンジェロ絵画に代表される様式を発展させた。

 一般的趣味人(?)が見るべきは、作品解説にある 図7トゥルニュ、69・87トゥールーズ、76・98ヴェズレー、78・118~120モワサック、82~84・86オータン、99クリュニー・・であるか・・・

第2章 空間の世界

安發和彰 長塚安司 p101

ロマネスク建築の特色―はじめに
地域展望
建築構造
建築タイプ
ロマネスク様式の広がり―広がりの範囲とその分析
バシリカ式聖堂の広がり
広間式聖堂の広がり

 

第3章 形の世界

安發和彰 五十嵐見鳥 近藤フジエ 馬場雅美 p177

はじめに
ファサード
テュンパヌム

柱頭
後陣外壁装飾
回廊
各地域の特性―
ドイツ 
北東フランス
南西フランス
スペイン
東欧
北欧 

 「地域」にイタリアとイギリスがないので驚いた・・
しかしよく見ると次の章にはある・・

第4章 色の世界

安發和彰 近藤フジエ 長塚安司 馬場雅美 p237

ロマネスク壁画の特性―壁画と浮き彫り彫刻
壁画装飾
壁画様式
画家の問題
壁画の施工
様式の分布
床モザイク
各地域の特性―
イタリア
イギリス
南西フランス
フランス南東部・中部
スペイン
ドイツ、 北欧、 東欧

壁画の図像プログラム

安發和彰 近藤フジエ 長塚安司 p254


神の顕現―チヴァ―テのサン・ピエトロ・アル・モンテ聖堂
聖堂全体のプログラム―サン・サヴァン修道院聖堂
サンタンジェロ・イン・フォルミス聖堂

選択されたテーマ―カタルーニャ地方の聖堂
ノアン・ヴィックのサン・マルタン聖堂とベルゼ・ラ・ヴィル礼拝堂
ランバッハ聖堂旧西内陣
レオンのサン・イシドーロ聖堂王家墓廟

第5章 荘厳美術

長塚 安司 p285


はじめに
小芸術
写本挿絵
板絵
十字架板絵

第6章 ロマネスク美術の終焉

長塚 安司 p301


周辺の美術
シト―派
ゴシック美術への推移
古代との対話の再開 
ロマネスク様式の消滅

ロマネスク絵画の特色 線的・平面的なものの把握(8‐309)

 訪れるべきロマネスク聖堂がたくさんあって、今も機能しているところもある、という感覚なので、「消滅」という内容は・・次に続く~物件であるが・・

テーマ特集

巡礼

五十嵐見鳥 p313

巡礼の伝統
聖遺物崇拝
サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼
巡礼行
慈善行
本物の巡礼とは

ロマネスク装飾における「生と死」

馬場雅美 安發和彰 p321


循環する「時」の表象
黙示録の至福世界

作品解説(182図)

p329

資料

p399

ロマネスクの主な聖堂 (p400)イタリア12、ドイツ8、フランス30、イギリス2、スペイン12
地図:サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路
ロマネスク時代のヨーロッパ
聖堂所在地 (p413)
サン・サヴァン修道院聖堂壁画配置見取り図(p421)
参考文献(p423)
索引(p428)

月報

対談 粟津則雄(&長塚安司) ヨーロッパへの行き始めは大都市司会かない。どこにでもゴシック教会がある、形での上昇欲に不安を感じた。73年にロマネスクを発見。人間的なぬくもりを感じさせる美術。

モニュマン・フランセ(フランス文化財博物館) 関口敦子
「ムラージュmoulage」=彫刻模型を作る技法
中世建築の修復の専門家ヴィオレ=ル=デュク(1814‐1879)の比較彫刻博物館構想、1878年のパリ万博で実現

私とロマネスクの出逢い 田沼武能(写真家)
スペインのボイ谷(ピレネー山麓)のロマネスク教会は、今なお中世を生きている。

ロマネスクのやさしい闇 磯崎 新
近代建築の先駆者 ル・コルヴュジェのロンシャンの礼拝堂(フランス東部1955)、 「直角の詩」を造り出すといい、工業製品の機械的組み立てでデザインすると思われていた人の急旋回、建築家としての作品と画家としての作品の乖離 複雑に屈折させられた光線が闇に近くまで閉ざされた内部へと滲み込んでくる、暗闇の空間の単純さはロマネスクの系譜にある。
生涯そこに引きこもっていた修道士たちの日常を想像しひそかに覗き見る、ロマネスクのやさしい闇が誘惑し続ける。
*「間(イマジナリー・スペース)」''光の器''

 以上目次読書

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