尾形希和子著
天使か悪魔か―「風」の両義性
翼をつけた男性の姿
悪魔的イメージへの変遷
自然への畏怖が産みの親
→風の薔薇
「風の薔薇」という図像があるというので検索してみた・・
ある地点から見て各方位はどの方角にあたるかを示す記号に,風配図wind roseと呼ばれるものがある。直訳すれば〈風の薔薇(ばら)〉の意で,幾層かの同心円と中心から放射される方位線とから成る。形が薔薇の花びらに似ているためにそう呼ばれ,ギリシア時代からすでに使用されていた。(コトバンク)
"Wind rose" by Unknown - Andrew McCormick Maps and Prints Collection,
from the UBC Library Digital Collections.
Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.
図4-17 「風の薔薇」ラバヌス・マウルス・マグネンティウス「物事の本性について」
モンテ・カッシーノ修道院図書館蔵、cad.132,1022~1023年
いわゆる「風の薔薇」と呼ばれる同心円的宇宙図にも、しばしば天使と「風」の擬人像がともに描かれる。 (p164)
写本に描かれる風の薔薇のダイヤグラムは、東西南北の四方向の風が、それぞれ二つの二次的な副風を伴って十二の風となり、ロマネスク期までに複雑化していた 「風」は死者の魂をあの世へと導くプシュコポンプ(魂の運び手)的存在であるという概念は、キリスト教にも流れ込んでいる(「教会の怪物たち」p164)
Rabanus Maurus Magnentius(780?-856)
百科全書的作品『事物の本性』の著者,
カロリング朝期の最も傑出した教師・著述家→rabanus_maurus.htmlへ)
ユダヤの伝説によれば、風や水は神によって創造されてものではなく、原初から存在していた。だからこそ、その二つの自然の力は強大であり、それを宥(なだめるために、人間は多くの儀式や呪文を行使したのである(p164)
それまでは翼を持っていなかった天使像が有翼の姿で定着するのはまさに魂の運び手としての風と天使の同一視による
ベアトゥスも776年に著わした『黙示録注解』の中で、天使は風にならって翼を持つのだと言っている。(p166)