唐草図鑑
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ロマネスクの美術

サン・ブノワ・シュル・ロワール修道院
(Saint-Benoit-sur-Loire)

 

エミール・マールの『ロマネスクの図像学』
第1章の図版・・・38
翻訳者追加の教会の全景写真他の図版は・・6
その中でこのページで見るのは、 サン・ブノア・シュル・ロアールの修道院教会・ポーチの柱頭のあたりを
 『ロマネスクの図像学』上p30にでてくる、サン・ブノワ・シュル・ロワール修道院であるが、今まで見ていない。ここで重要なベアトゥスの『黙示録』は、「イタリア古寺巡礼」2014k/italy_furudera.htmlと「教会の怪物たち」の第2章2014k/romanesque_ogata2.htmlで少々見てきましたが・・

 

ベアトゥスの『黙示録』の影響

(p30)ベアトゥスの『黙示録』の影響
北フランスのフランス王国に属してしているが、南部の古写本はここにまで達している
柱頭彫刻のいくつかが我々にその証拠を与えてくれる。  

 

Abbaye de Saint-Benoît-sur-Loire-France.JPG
"Abbaye de Saint-Benoît-sur-Loire-France" by Gilbert Bochenek
- Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

L'Apocalype Saint-Benoît-sur-Loire 5.jpg
"L'Apocalype Saint-Benoît-sur-Loire 5" by Moitsu
- Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

Saint-Benoit-sur-Loire
サン・ベネディクト(480または490-547)のフランス名はサン・ブノワ。ベネディクトはイタリアのヌルシアに生まれたベネディクト会の創始者(Wikipedia:ヌルシアのベネディクトゥス)、モンテ・カッシーノ修道院設立→2014k/monte_cassino.html

https://fr.wikipedia.org/Abbaye de Saint-Benoît-sur-Loire
https://yoku2.blog.so-net.ne.jp/2012-04-29
https://muso.to/f-sannbunowa.htm

Abbaye de St Benoit sur Loire Porche (2).jpg
"Abbaye de St Benoit sur Loire Porche (2)" by MONNIER-COUEDOR
- Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

(p34)モアサックとサン・ブノア・シュル・ロアールは『黙示録』写本の模倣の最も顕著な実例を提供してくれる。他にも2つ例を挙げることができる

第1章の図版は 1.モアサックのタンパン
2.四つの生き物と二十四長老に囲まれたキリスト:サン・スヴェールの『黙示録』
3・四つの生き物と二十四長老に囲まれたキリスト:オーセールの大聖堂のデッサン
4.十字架のキリスト:南フランスの写本、パリ国立図書館(latin 11550)
5.動物の頭を持った福音史家、モアサックの柱頭
6.動物の頭を持った福音史家たち、アストルガの『黙示録』
それから、「聖ヨハネの幻視」で写本との相似を示すもの 

7.ラ・ランド・ド・キュブザック(ジロンド県)のタンパン
8.ベアトゥスの『黙示録』の写本、パリ国立図書館(nouv.acq.lat. 1366)//サン・スヴェール写本より少なくとも一世紀後の写本

Saint-André-de-Cubzac (Gironde) église 01.JPG
"Saint-André-de-Cubzac (Gironde) église 01" by Havang(nl)
- Own work. Licensed under CC0 via Wikimedia Commons.

 図版7のサンタンドレ・ド・キュブザック(Saint Andre De Cubzac)アキテーヌ地方 Aquitaine(Gironde, France).Wikimediaではタンパンの彫刻は、Wikipediaでみると、もうそこに見られないようだ?

続いて図9と10の「二人の老人の争い」の相似
9.サン・スヴェールの『黙示録』
10.ポアティエのサンティレールに由来する柱頭

(p34)サン・スヴェール写本の中には、本文とは何の関係もない軽い風俗的な題材による挿絵が織り込まれており、芸術家が恐ろしい場面の連続に疲れた読者を休ませようとしているかのようである

(p36)あの荘重なタンパン以上に、暗闇に満たされたロマネスク教会に調和するものはない。
彫刻家の中にはベアトゥスの『黙示録』を見たことのないものも多分いただろう。しかし、この書物の精髄がモアサックのタンパンのような作品の上に乗り移っただけで十分であった。モアサックは我が芸術家たちにとってまさに出発点となったのである。

モアサック修道院回廊
小円柱に交じって重厚な角柱がたつ・・
十二使徒の彫りの浅い浮彫で飾られている(1100年以前のもの)→2014k/moissac.html

11.福音史家、リモージュの「福音書抄録」、11世紀(サン・マルシアル修道院旧蔵) パリ国立図書館(latin 254)
12.聖アウグスティヌス、リモージュの写本、パリ国立図書館(latin 1987)
13.使徒たち、トゥールーズの美術館(ギラベルトス作の有名な像)
14.ライオンと子羊を抱く女性たち、トゥールーズの美術館

(p34) (図11,13,14)ウロコ状の台の上に立っている。(カロリング朝以来の伝統に反し座ってない)、(図11,13は)アーケーとの下にたち、右手で祝福し、左手に本を持つ、(図12,13,14)は足を奇妙な形でX状に交差している
(p40)モワサックの柱廊の浮彫との類似が際立つ。(極めて彫りの浅い、南フランス系芸術の最初の試行的作品)

Moissac, Abbaye Saint-Pierre-PM 15006.jpg
"Moissac, Abbaye Saint-Pierre-PM 15006" by PMRMaeyaert
- Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

Moissac, Abbaye Saint-Pierre-PM 15012.jpg
"Moissac, Abbaye Saint-Pierre-PM 15012" by PMRMaeyaert
- Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons.

 「モアサックの長い笏杖を持つ聖アンドレ」とはこれでしょうか?この後、スイヤックの中央柱の図版と、その彫刻家が参照したに違いない相似する図版が見られる写本が挙げられている・・
スイヤックの中央柱は馬杉宗夫さんの本で少々見ました2014k/moissac2.html

図15スイヤック(ロット県)の中央柱 16.四福音書共観表(=カノン)の一部、リモージュのサン・マルシアスの写本、パリ国会図書館(latin 5)

(p42)シリア的な図柄
重なり合って互いに喰い合う動物たち
すぐれた他彫刻家は、模倣しつつも、動物たちをより巧みにもつれ合わさせ、より巧妙にまとめ上げた

 この柱(no模造)も パリの建築・遺産博物館Cité de l'architecture et du patrimoineでみられるようですね

図17.悪しき金持ちの譬え、モアサックのポーチ 18.悪しき金持ちの譬え、パリ国会図書館の写本挿絵(latin 833)

(p42)球帽を被ったアブラハムが胸にラザロを抱いていて、その科法では悪しき金持ちが炎の中で悪魔たちにさいなまれている。このたい肥はきわめて古い時代までさかのぼる。なぜならそれは聖グレゴリオスのギリシア語写本にすでに現れている上、そのオリジナルはさらに六世紀までさかのぼる。

(p45)フランス南西部の彫刻家たちが写本から想を得、挿絵に様々な示唆を求めていたことには、今や疑う余地はない

再掲:第1章の図版・・・38
翻訳者追加の教会の全景写真他の図版は・・6
モアサックの修道院教会・回廊(※2014k/moissac.html
このページ Saint-Benoit-sur-Loire.htmlにて、図版1~18を見ました。

 第1章の残りの図は、あと20、それと、 リポールの修道院の扉口Monestir de Santa Maria de Ripoll
アヴァロンのサン・ラザール教会の扉口のねじれ柱で、→2014k/karakusa_umasugi.htmlにて既に見ている部分もあるが、エミール・マールの著書に従ってSanta_Maria_de_Ripoll.htmlで、更に残りの図版を見ます

 →エミール・マール『ロマネスクの図像学』(下)を読む 、に続く
アーウィン・パノフスキーを読む
古代ギリシア芸術(4様式)

神話学のアウトラインギリシア神話の美術研究に続く・・

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