唐草図鑑

聖樹 聖獣文様 概観

幾何学文様に次いで現れたとされる動物文様であるが、ここで、古代において、「動物」は、具体的にどんなものであったか、文様に、聖獣・聖鳥として現れる動物を概観します。 

聖獣:蛇に対置されるもの
聖獣・聖鳥


杉浦康平「生命樹」を参考に 表にまとめてみました。
(クリックすると画像ページにリンクしています)

聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
バビロニア 怪物の蛇
闇と悪の象徴

獅子の頭のある鷲

天の秩序
円筒印像
樹下双鳥図
(双鳥聖獣文)
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
古代
エジプト
ウラエウス
知恵と力の象徴
立ち上がる怒った雌のコブラ
王権のシンボル
王冠や神殿の頂に君臨

鷹(隼)

鵞鳥

ホルス神
王、太陽、天空の象徴
ラー神=鵞鳥の卵から生まれた
アメン神=鵞鳥の姿をしている
対立せず、並ぶ
蛇形記章
有翼円輪=鷲の翼の広がり
中央の日輪を取り囲む
2匹の蛇
国旗
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
古代
ペルシア
アフリマン
(悪と暗黒の破壊霊)

孔雀

太陽の光の象徴
太陽の力を象徴する
ハンサ

王冠を頂く鳥

太陽、星、火
ゾロアスター教
アフラマズダー
(善と光明の神)
ペルセポリスの壁画
有翼円輪のホルスの位置に
アフラアズダーが立つ
日輪を取り囲む2匹の蛇※が帯に変容
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
古代
ギリシア
ヘルメスの杖の蛇
アスクレピオスの杖の蛇
モーセの青銅の蛇

古代エジプト
ホルス神(ファラオ)
↓古代ギリシア
最高神ゼウス
⇒古代ローマ
最高神 ユピテル
紋章
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
インド コブラ ナーガ=蛇の王
(龍王); 精霊 神
水の変幻の象徴

孔雀

鵞鳥

太陽の光の象徴
天の火と地の水の相克が
生み出す豊穣原理
地下世界パーターラに居住
最下層に原初の蛇アナンタが 1000の頭を広げて
世界の重みを支えている

ムチャリンダ =仏陀を守るコブ
ナーガ⇒ムチャリンダ
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
チベット
ヒンドゥー文化圏
ナーガ(へび)
ガルダ ナーガ
太陽の光の象徴

ガルダ

金色の鷲
頭は鷲、体は人間
ヴィシュヌ神の乗り物
仏画の釈迦如来の光背の
頂点に立つガルガ
ガルガ・ナーガ(雌雄一対の竜王)を 両手にもち、蛇を食らう 2匹の蛇※をくわえている図像化 仏教に取り入れられる。

カルラ⇒天龍八部神

聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
ネパール ヒンドゥー教三大神の一人
シヴァ神の首にまきつく、
(頭上にとぐろをまく)

地下世界の王
天の水の象徴
宝珠(太陽の象徴)を尾の上に乗せる
寺院の「リンガ」を荘厳する屋根飾り
4匹の下降する蛇
天の水の働き
インド古来の瞑想原理にもとづく
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
中国
天子(皇帝)の象徴
右掌で「如意宝珠」を掴む
対立原理が溶け合う 複合獣
「龍は九つの獣に似る」

鴛鴦

おしどり⇒(鳳凰) 帝王の象徴
龍と鳳凰の一対性
龍(陽)=天子
鳳凰(陰)=皇后
他の文化圏と位相を異にする
火の鳥
鳥(からす)⇒鳳凰
蛇⇒龍
華麗なる展開

二大霊獣
皇帝の玉座
皇帝の礼服(こん衣)
聖獣(ヘビ) 聖鳥(象徴するもの) 遺物
日本 龍の力は湿潤な気候で後退
※「おしらさま」白ヘビ

鳳凰

鶴、雉

中国文化の影響、近世に変化

八咫ガラス

※天照大神の命で派遣された金色の鳶
正倉院御物
花鳥双鳥文きょうけちあしぎぬ
こん龍御衣=天皇の即位式で使われる
最上の礼服

神輿  頂点に金色の鳳凰
雨をもたらす霊獣

龍は蕨手(植物の渦、唐草の渦)縒紐に姿を変えた
(杉浦説)

  以上であるが、更にヨーロッパの古い時代を探ったマリア・ギンブタスの書では、「水鳥」というものと「鹿」が重要であった・・・
水鳥は、水の女王 (水女神と蛇女神)。(別サイトで少しだけ見た)
また、
「象徴体系において鹿という動物が特権的な位置を占めているのは、単に姿が美しく優美で機敏である からでなく、鹿の角の重要性、枝角が生えかわる再生と成長の周期を持っているから」という。(「古ヨーロッパの神々」p169)

古代オリエントの文様(宮下佐江子解説) 


NEXT2匹のヘビについて
この文献(杉浦康平「生命樹」)では北欧やケルト方向が抜けているので、そちらもみてみたい。
双鳥聖獣文(樹下双鳥図)なども調べてみます
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