唐草図鑑

獅子のシンボル

ライオンから獅子への旅

サスガ荒俣さんで、平凡社の大百科事典のライオンの項目だけでなく、獅子についての本がきっちりありましたね・・
今までバラバラだったので、この際じっくり見て、筋道をおきます。検索すると動画もあり、さらに理解に有益です。(2011年1月2日)

写真:「大村次郷~アジアをゆく」フォト・ルポタージュ


獅子 王権と魔除けのシンボル (アジアをゆく)

(荒俣宏著 大村次郷/写真 集英社 2000年12月刊)


(内容紹介) 百獣の王ライオンは、聖獣として世界中、いつの時代にも王権のシンボルであり、同時に魔除けであった。エジプトのスフィンクスから日光東照宮の唐獅子まで、全アジアを貫通する高貴な獣形の千変万化。
目次
ライオンから獅子への旅
王権を誇示するライオン
王城守護獣のルーツを探る
星と太陽とライオンと
猊下のライオン
ネパールの宝珠を冠った獅子
獅子の国、獅子の山
須弥山に吠える聖獣
舞い踊るアジアの獅子たち
漢字の国にやってきたライオン
高麗にはいなかった狛犬
イメージジャングルの獅子狩

まずは、 扉の一文をみると
西アジアの古代王国シュメール、アッシリアなどでは、百獣の王、獅子を仕留めることが王者の証とされた。一方で、大地母神を背に乗せて 疾駆する随獣でもあり、侵入者を許さない王城の守護獣でもあった。 真夏の季節のシンボルとなったのも、その強い生命力の故であったろう。
獅子が担った様々な性格、姿。
そのなかで、スフィンクスやグリフォンなど、多様な幻獣も生み出された。 獅子のいない東アジアではどうか。 鋭い眼光、雄々しいたてがみの獣は新しい造形をまとった。 例えば、ベトナムの獅子頭、中国のカイチ、日本の狛犬、日光東照宮の唐獅子。


カバー写真の表は、「ネムルド」山の王墓を守る獅子の彫像@ トルコ、南東アナトリア。

(眠らないと言われたライオンが墓守りの役を担った)

ネムルド?
※Nemrut Dağ ネムル「ト」 のようです
Wikipedia
「大英博物館AtoZ」の翻訳のLIONの項には 「ニムルド」(アッシリア、イシュタール神殿のライオンの巨像)という地名が出てくるが、
そのニムルド(Nimrud)(Wikipediaとの混同ミスか?)
Wikipedia古代オリエントの地名一覧



2008年5月大英博物館にて その他の撮影写真はこちら


補足:
「ライオンはいろいろな形で大英博物館の象徴にもなっており、最も有名なのは、戦車に乗る王Ashurbanipal(「大英博物館AtoZ」p188)」
アッシリア、ニネヴァ北宮殿〔前645年ごろ〕
高さ160センチ、H・ラッサム発掘
https://www.cismor.jp/jp/lectures/2007/documents/report070707.pdfに解説があります・・・
p197「アッシュルバニパルの代に新たに建立さ れた北宮殿の一室には、ライオン狩りのモティー フだけで壁面を飾ったものがあります。これらの 浮彫りは、19世紀半ばに発掘された後、すべて イギリスに運ばれて、ロンドンの大英博物館に収 蔵されています(by渡辺千香子さん)


ライオンから獅子への旅

ライオンの心を持つ者ー西アジア古代王国の英雄からはじまる


かっては人類に次いで最も広い生息域を確保した哺乳類
勇者=ライオンの心をもつもの
大地に豊穣をもたらす聖獣
地母神キュベレ(農業神)の遣い・・放牧文化とは異なる生活様式
イシュタル(戦女神・)ライオンを乗り物にする(本来は多産の地母神) ギルガメシュに恋した。いライオンの象徴とともに西へ(アフロディテやアテナにイメージ提供)
インドから東のアジア
サンスクリット「シンハ」 ・・西方のスフィンクス(獅子身の霊獣)と同根
漢字「猊(げい)」、日本語「シシ(獅子)」 東アジアではライオンの象徴が仏教を背景として広まったことで、西方に劣らない多くのシンボリズムが誕生した
百獣の王(師)を意味する「師子」がその典型
図p4-5: アッシリア王(在位前658-627)アッシュルバニパルのライオン狩り
首都ニネヴァ北宮殿の羽目板(オルトスタット)を飾っていた浮き彫り (大英博物館)
ライオン狩りが王者の証

ライオン狩りのシンボリズム
自然界の地霊がつかさどった大地を、人間が代わって支配するとき、出現した

Wikipediaアッシュルバニパル


図p6:ライオンの足と雄牛の角をつかむギルガメシュの浮彫
後期ヒッタイト時代(前11-8世紀)(アナトリア文明博物館



この by terry6581さんの動画に出てきます


図:両手でライオンを掴み、踏みつける王を描く銀製装飾板
ホルムズド一世といわれる (ササン朝ペルシア 3世紀(大英博物館)
ササン朝ペルシア(226~651)Hormizd I (「ホルズミド」とも)
(図を検索しましたが特に見当たりません)


図p7・ギルガメシュを思わせる英雄像
8世紀4.7メートルイラク出土(ルーブル美術館)


Wikipediaギルガメシュに引用される別の図


王権を誇示するライオン

ライオン殺しのヘラクレスへの憧憬



photo by Kpisimon Wikipedia) 図p11 ヘラクレスと握手するアンティオコス一世(父のミトリダテスまたはアンティオコス) の像の浮き彫り ネムルト山西、アルサメイア


ニムルト山の 「西側のテラスには、木星、水星、火星などの星の配列を眺める獅子のレリーフが刻まれた石版があり、紀元前62年6月7日を示している。」(Wikipedia)
荒俣さんのこの本では7月7日となっている
「世界最古のホロスコープ」
(一等星レグルス(=獅子座生まれの王)の周辺に水星 、火星、木星(アポロン、ヘラクレス、ゼウス)が集まった日)
首輪のような三日月はコマゲネ女神を表す

コマゲネ女神?
コマゲネ王朝の王アンティオコス1世
Wikipedia紀元前69年-紀元前36年)
(セレウコス朝シリアの王とは別人)


「たてがみがふさふさしているのがこの時代の特徴」

隣に鷲の像 ・・西アジアでは鷲もライオンと並ぶ力の象徴・・

⇒以前の聖獣概観 蛇に対置される聖鳥(直しが必要となっている)


王城守護獣のルーツを探る

城門の番獣から冥界の遣いスフィンクスまで


アッシリア勢力が去った後のアナトリア・・ヒッタイトの支配
アッシリアから伝えられた王権の象徴ライオンは⇒王城や門を守護する番神に
ヒッタイト人にとって勇敢な百獣の王はライオンよりもヒョウ
太陽神へパトはヒョウを従える
ライオンは門を守る獣に役割交代

獅子門のページ


大都ボアズカレの城門「獅子門」
城門におかれた一対のライオン像・・西はギリシアのミュケナイに、東はインド、中国を経て日本の狛犬に

古代オリエントの強国の一つ:アッシリア
前612年にニネヴぇが滅びるまでの2000年間アッシリアの歴代の王は戦士であることを要求された
王の武力を証明する儀式がライオン狩りであった


ライオンの凶暴性=死をもたらす破壊神
エジプトのセクメト女神、新バビロニアのネルがる神などの破壊神(冥界神)はすべて、 ライオンの姿をかたどるか、獅子像を持物としていた)
ここから、冥界を守るスフィンクスが創造された


図p19 冥界の神 ネルガルにささげられたと考えられる4頭のライオンが刻まれた剣
ボアズカレ北東ヤズルカヤ(トルコ語で『碑文のある岩場』という意味)
※Wikipediaメソポタミア神話の神 Nergal ※こちらの方のブログの写真シャルマ神に抱かれたトゥダリヤス4世の左側にある
https://www.ozawa-katsuhiko.com/
小回廊、[剣の神]


神像台座 カルケミシュ王門の内側 図p24 ライオンのたてがみを引っ張る口元が鳥の形をした人間
後期ヒッタイト時代 アナトリア文明博物館
◎ライオンは舌を出している

スフィンクスと双頭の鷲


ボアズカレ北東アラジャホユックのスフィンクス門
ヒッタイト帝国時代 前14世紀 高さ2.1メートル

側面に双頭の鷲が刻まれている。(!)

図p26 有翼スフィンクス 尾に猛禽類の頭⇒万能な動物であることを意味していた 後期ヒッタイト前8世紀トルコ南部ズィンズィルリ出土
イスタンブール考古学博物館蔵

図p29 ライオンとカモシカの彫像 2世紀
ライオンは月神のアッラート女神をカモシカは庇護を求める弱者をあらわす
パルミュラ博物館蔵
シリア。ダマスカス北東 パルミュラ=ナツメヤシの町

図p32 スーサ宮殿を飾っていた彩釉のレンガのライオン
アケメネス朝ペルシア(前6-4世紀)ルーブル美術館蔵 2世紀
ライオンは月神のアッラート女神をカモシカは庇護を求める弱者をあらわす
パルミュラ博物館蔵
パルミュラ=ナツメヤシの町

googleブック:世界遺産検定公式テキスト, 第 1 巻
※ブログ写真でイスラーム ライオン紀行だそうですが https://mphot.exblog.jp/6262525/

獅子・ライオン


獅子 王権と魔除けのシンボル

目次

ライオンから獅子への旅
王権を誇示するライオン
王城守護獣のルーツを探る

___これ以下は「獅子」(2)
星と太陽とライオンと/ 猊下のライオン/ ネパールの宝珠を冠った獅子/ 獅子の国、獅子の山/ 須弥山に吠える聖獣/ 舞い踊るアジアの獅子たち/ 漢字の国にやってきたライオン/ 高麗にはいなかった狛犬/ イメージジャングルの獅子狩




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