唐草図鑑
聖樹聖獣文様

西洋の芸術

ケンタウロス

半人半獣ということ

wikimedia での解:ケンタウロス(古希: Κένταυρος, Kentaurs, ラテン語: Centaurus)とは、ギリシア神話に登場する半人半獣の種族である。馬の首から上が人間の上半身に置き換わったような姿をしている。


半人半獣 2という数

『西洋シンボル事典-キリスト教美術の記号とイメージー』(八坂書房2003) 数のシンボル (p64)
複数を示す最初の数であり、それゆえ本当の意味での最初の数と言える。 対の獅子、双頭の竜、2つの要素から成る生き物(グリフィン、セイレーン、ケンタウルス)は人間に優越する不可解な力を表している。二元論はロマネスク美術の象徴主義の本質を規定するものである。(詳しくは→ヤヌスのページの数のシンボルへ

この西洋シンボル事典では、2つの要素から成る生き物は人間を優越するというのだが、『フィシオログス』(西暦200年成立という)では、以下のように、全く正反対のことを言っているのが興味深い。

人間もそうだが、二つに分裂したら、何をしても安定がない。教区の中では一見神をあがめる風でありながら、一人離しておくとまるで家畜というのもいる。
こういう連中は、セイレーンとケンタウロス、つまり分裂した生ふまじめな異教の似姿である:byフィシオログス (Documenta Historiae Naturalium)・・ Otto Seel解題 (著), 梶田 昭 (訳)、p42 博品社

ホメロスの「イリアス」で言及されている幻獣は
「ケンタウロス」と「キマイラ」の2種だけだそうだ。index_karakusa10.html
ここで、おさらいで、美術用語辞典を見ておきます

『岩波西洋美術用語辞典』(2005)

ギリシア神話に登場する、上半身が人間で下半身が馬の種族。したがって、人間の手と馬の四肢をもつ。テッサリアのぺリオン山に住む。
ラピテス(Lapithes)族王ペイトリオスの婚礼で酒を飲み狼藉に及ぼうとしてテセウスらに討たれた一族(この戦いを「ケンタウロマキア」と称する)や、ヘラクレスの妻デイネイラ(Deineira) を襲って射殺されたネッソスなど、野蛮で好色な性格を伝える逸話が多い。アキレウス、イアソン、アスクレピオスらを育てたケイロン(Chiron)だけは例外的な知者として知られる。

『新潮世界美術辞典』(1985)

Kentauros(ケンタウロス族)
ギリシア神話の半人半場の種族。古くは人の上半身に馬の下半身が、のちには馬の体に人の上半身がつく姿であらわされた。
ケンタウロマキア は美術の好主題となった。 パルテノーンの南側メトープ。オリュンピアのゼウス神殿の西ぺディメントの群像は名高い。
近世に置いてもルネサンス以来繰り返し美術に登場し、
ボッティチェリ「パラスとケンタウロス」(ウフィッツイ美術館)
リューベンス「ケンタウルスとラピュタ人の戦い』(プラド美術館)などがある。

ケンタウロマキア

パルテノン神殿の高浮かし彫りメトープ: 紀元前446年から440年の間に製作されたとあり、彫刻家のカラミス (Kalamis) がデザインしたと考えられる
メトープは、身体運動を筋肉でなく輪郭で制限している戦士の表情や、ケンタウロスの伝説像 において静脈まで忠実に表現した様を分析した結果から、厳格様式(en.Wikipedia)を現在に伝えるものと判断された
2014k/parthenon.html

動物シンボル事典

ジャン・ポール・クレベール著p144~146

ギリシア語のケンタウロス=「牡牛を刺すもの」・・テッサリア人のこと
テッサリア地方(ギリシャの穀倉地帯)の話: イクシーオン(太陽)と不思議な雨雲の間の愛慾から生まれた半人半馬の生き物・・ 頭と胸が人間、胴と脚は馬
ヘラクレスがテッサリア地方から彼らを駆逐したという

解剖学上の矛盾 ・・腹部が二つの胸にはさまれている(by サンドラーユ「形体の知恵と狂気」)
→ ロマネスクのケンタウロス(例えばカタロニアのセラボーヌ修道院の頭だけ人間)ならばまだしも受け入れられたかもしれない;しかしより理性的なロマネスク的結合は美的規範の内なる規則を満足させることはより少ない

ピレネー山脈の麓に佇むセラボヌ修道院の柱頭
Sainte Marie de Serrabone

サートゥルヌスとウィリア(オーケアノスの娘)の子キロン(※ケイローン)・・薬草の分類⇒ケンタウロスの花=ヤグルマソウなど

キリスト教の時代・・・ケンタウロスは、自分の欲望に引きずられ、自分の本能を制御することのできない人間の象徴

中世・・ケンタウロスは異端の象徴善と悪に引き裂かれた人間の象徴

『動物シンボル事典』で言及された図像

(p146)

アッシジにあるジオットのフレスコ画
聖フランチェスコが克服しなければならない激情の一つ

ラス・アバデサス のサン・ホアンにあるスフィンクスのように翼を持ったケンタウロス群像

San Joan de les Abadesses(サン・ジョアン・ダ・ラザバデサス)スペイン、カタルーニャ地方

柱頭 https://www.flickr.com/photos/monestirspuntcat/

ヴーヴァーンの胴が二つ、頭が一つのケンタウロス群像

アンジェ(Angers) の牡馬の胴と人間の女の胴を併せ持つ両性具有的ケンタウロスの像

エトルリアのケンタウロス・・例えばローマのヴィア・ジューリア美術館にあるヴルチのケンタウロスは紀元前600年のもの(背中の下方で馬の後ろ半身につながっている)・・このタイプのものはその後作られたことがない (ドウビドゥーリ「フランス彫刻に見られる博物誌」)

ヘレニズムテラコッタケンタウルス、年頃紀元前2世紀

ピカソ

http://newedition.co.jp/zaiko/picasso/

二本脚のセントール

オットー・ゼールの『フィシオログス』のケンタウロスだが、動物シンボル事典の図もこれである。
「怪獣とは、元来、異形のものではある。だがこのケンタウロスはその限度を超えている。この姿でも歩むというのだろうか」とジャン・ポール・クレベールは言う。

ケンタウロスにはメスcentauressesがいない?

http://psycheskinner.hubpages.com/hub/Female-Centaurs Most centaurs discussed in myth and history are described as being male, and even abducting human females to mate with. But female centaurs are also described and they were considered a race that was self-sustaining. Stories begin mentioning female centaurs (a.k.a. Centaurides) after about 200 BC.

紀元前200年に見られるという

http://psycheskinner.hubpages.com/hub/Female-Centaurs
A female centaur is the symbol of the Italian town of Taormina. The town coat of arms depicts a white centauress wearing a crown and carrying an orb in one hand and a scepter in the other.

Taormina Centaur

A female centaur, the symbol of Taormina
The symbol of Taormina is a two legged centaur with the bust of an angel

シチリア島のタオルミーナという街のシンボル
どうやら17世紀のもののようですが、女のセントールで更に2本脚というのがすごい。いかにもバロック時代であるか・・

A Baroque fountain (1635) with a centaur, the symbol of Taormina, is at the center of Piazza del Duomo. Baroque Fountain Piazza Del Duomo Taormina Sicily

In the middle of Piazza del Duomo, this 17th century baroque fountain draws much attention. A crowned female centaur holds the world in one hand and a scepter in the other while sea creatures spew water from their mouths. Marble putti support the whole thing.

カップルのセントール

尾形希和子さん『教会の怪物』の 図2-1「パラダイスのアダムとエヴァ」の中の「ケンタウロス」カップル
アレオピンド ゥスの二連板(ディプティク) 9世紀@ルーブル美術館 →2014k/romanesque_ogata2.html

ここでの話は[棍棒を持っている]ことに注意せよということでしたね。 弓と矢ではなく・・

ちなみに、同じ図像のあるJacqueline Leclercq-Marxの論考 Du monstre androcéphale au monstre humanisé . À propos des sirènes et des centaures, et de leur famille, dans le haut Moyen Âge et à l’époque romane(人間の頭のモンスターヒューマノイドモンスター。中世初期、ローマ時代の人魚やケンタウロス、及びその家族、について)がWEB公開されていました。⇒J-L-Marx.html

「教会の怪物」のp158図4-13 「四大」cod,12600 fol.30.『星の配置と場所 De ordine ac.positiones stellarum』ウィーン国立図書館蔵、1210~1220年


ケンタウロスが描かれている13世紀初頭の写本
図4-13   四代元素のうちの「土(TERRA)]を表す記号として描かれた、
古代の大地の擬人像 
ケンタウロスの上にまたがりケンタウロスに乳を含ませるのは、

ケンタウロスは「大地」に近い下半身が獣であり、その獣性により「土」のエレメントに結び付けられやすいのだろう。半人半獣のケンタウロスやサテュロス、パンなどはしばしば混同された(p160)

『フィシオログス』の中ではセイレーンがケンタウロスと対をなすものと考えられていたため、この怪物はしばしばペアで表され、図像の上でも影響を与えあった。(p162) 

Giambologna, ercole e il centauro nesso 07.JPG
"Giambologna, ercole e il centauro nesso 07" by I, Sailko. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via Wikimedia Commons.

Heracles and Nessus by Giambologna

16世紀

「ケンタウロス・ネッソスを打つヘーラクレース」(1599年)
@ロッジア・ディ・ランツィ 〔フィレンツェ〕

イメージ・シンボル事典

(p116)

1.山羊のケンタウロスは馬のケンタウロスよりも古いと思われる
女がケンタウロス族に運び去られる話は、5月の女王が山羊の背に乗った絵によるものであろう
騎馬民族のテッサリア人や、森林山地の部族を、その粗暴さを表すため半人半獣とした伝説の影響をうけた
ベルギリウスは、雪崩の擬人化として使っている(「アエネイス」7

2.智恵を表す。丘陵に捨てられた英雄がケンタウロスに発見され教えを受ける

3.人間を表す場合、二元性を表す

4.抑えられない情念を表す アタランテに対するケンタウロス族の襲撃(「アポロドロス」3)

5.異端、雲、人馬宮

おのれの動物部分と戦う人馬


p188図

人馬(p188)・・ 12-13世紀の風変わりなケンタウロス ・・人の部分がおのれの動物の部分と戦っている
怪物の尾が人間の胴体の部分を脅かし、人間の方は武具を構えて尾に相対している。

バルトルシャイティスは、13世紀末から15世紀にかけて西欧でもこのモチーフが流行したといっている。(『幻想の中世』134p)自分自身が持っているかもしれない悪しき部分との、人間の孤独な戦い

17世紀にキルヒャーのしるしたエジプトの平面球形図見ると、人馬宮は矢を握った人間の手元に、おそらくは豚であろう姿で表されている。その動物は次にくる磨羯宮(山羊宮)の持つ槍によって刺し貫かれている。その間には、雁が歩いており、その嘴で蛇を一匹つかまえている。ここで表されているのは、雁の示す英知と豚の示す獣性の戦いに他ならない

ゾディアックシンボル

Vézelay Portail Centauresse 220608.jpg
"Vézelay Portail Centauresse 220608" by Vassil
- 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示 3.0 via Wikimedia Commons.

Wikipedia地球球体説

1世紀(紀元50年ごろ)

Berthouville Centaur

Berthouville Centaur skyphos CdM Paris Cat60.jpg
Berthouville Centaur skyphos CdM Paris Cat60“ von © Marie-Lan Nguyen /
 Wikimedia Commons. Lizenziert unter CC BY 2.5 über Wikimedia Commons.

Cup centaurs Berthouville CdM n2.jpg
Cup centaurs Berthouville CdM n2“ von English: Unknown - Marie-Lan Nguyen (User:Jastrow), 2008-04-13.
Lizenziert unter Gemeinfrei über Wikimedia Commons.

Berthouville Centaur skyphos CdM Paris Cat60 n2.jpg
Berthouville Centaur skyphos CdM Paris Cat60 n2“ von Marie-Lan Nguyen (2010).
Lizenziert unter CC BY 2.5 über Wikimedia Commons.

in the Cabinet des Médailles at the Bibliothèque Nationale, Paris 仏蘭西

Centaure Chiron ケイローン

chiron.html

The sagittarius(いて座,人馬宮)

sagittarius.html

関連ぺージ

アスクレピオスは
ケンタウロス族の賢者ケイロンから医術を学んで名医となった。 死者を再生させる力まで持つに至ったので、 自然の理法が覆ることを恐れたゼウスの雷霆(らいてい)にうち殺され、 へびつかい座の星になったという。egypt/asklepios.html

さそりは名高い狩人オリオンを一撃で刺し殺したくらいであるから、 天にあがっても監視つきである。さそり座が天上で暴れた場合は、 隣にいるケンタウロスのケイロン(いて座)が射殺することになっている。orient/scorpion.html

ボッティチェリの一連の作品 (《春》《ビーナスの誕生》《パラスとケンタウロス》など) における人文主義的な寓意も,当時のフィレンツェの新プラトン主義思想を反映していると同時に,神話に教化的な意味を担わせている点では〈道徳的伝統〉の系列に属するともいえよう。(パノフスキーの『イコノロジー研究』)sinwa_bi.html

天竜八部衆の乾闥婆 (けんだつば)(ガンダルバgandharva)  帝釈天に仕える音楽神で香 (ガンダ gandha) を食べて生きるとされ,ギリシア神話のケンタウロスとの関係も指摘されているnaga.html

ケンタウロスの 有名な 図像

15世紀

サンドロ・ボッティチェリ《パラスとケンタウロス》ウフィツィ美術館蔵
Pallas and the Centaur (Pallade e Centauro) c.1485
Tempera on Canvas, 207 x 148cm Galleria degli Uffizi, Florence
Sandro Botticelli (1444/45-1510)

更に 20150421閲覧

※仏蘭西:メッツのサンテティエンヌ大聖堂のポータル[動物寓話的]
-Iconographie du portail nord de la cathédrale de Metz : bestiaire et morale

※希臘:テッサリアのケンタウロスの図像
http://expositions.bnf.fr/bestiaire/it/centaure/01.htm

黄道十二宮のCENTAURUS, CONSTELLATIO
http://hellenicperiod.blogspot.jp/2010/11/constellations.html

20151015追加
古代ギリシアのケンタウロスのテラコッタ 

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