『西洋美術のことば案内』(高橋 裕子 著 – 小学館 2008刊)の巻末の「西洋美術の基礎用語・人名辞典」については見ていましたが、ここで、本文の方にある「擬人像」をチェックしたい。
日本でも、太鼓を持った鬼の姿の雷神ないし「雷様」は描かれているが、観念を擬人化する伝統は乏しい。
また擬人化されたものは「神」となり、ニューヨーク港に建つ「自由」の擬人像は、「自由の女神」と呼ばれる。英語(と他の西欧語)では、”Liberty"と大文字で始めれば擬人像とわかるが、日本語ではこうした区別の手段がないから。「女神」とせざるを得ないのだろう。(p44)
16世紀には擬人像とその表し方及び意味づけを網羅した時点も敢行された。イタリアのチェーザレ・リーパによる『イコノロジア』(1593年)である。十年後には挿絵付き版も出た。→2015k/ripa.htmlIconologia Or,Moral Emblems
「自由(Liberta)」について、リーパは「白衣の女性で、右手に王笏、左手に帽子を持つ。傍らの地面には猫がいる。・・・猫は自由を最も愛するがゆえに、古来、この動物と同じく隷属に甘んじない人々によって紋章に取り入れられた」と述べる。(p44)
だがニューヨークの≪自由の女神≫(オーグストバルトルディ作、1875~84年)の足もとに猫はおらず、右手にたいまつ、左手に石板を持つところもリーパの記述とは異なっている。
19世紀には伝統的な型は忘れられていたのかもしれず、ドラクロワの≪民衆を導く自由の女神≫(1830年、ルーブル美術館)でも、「自由」は題名がなければそれとはわからない。
重要なキリスト教的美徳の一つ「慈愛(Charity)」は、「赤い衣をまとった女性で頭上には足の炎が燃えている。左手で幼児を抱えて乳を与え、ほかに二人の幼時をすがりづかせている」リーパはの記述のほぼ合致する作例が珍しくない。(p44)
チェーザレ・リーパ [イコノロジア](1603版)
イタリア語もその元のラテン語も、抽象名詞が女性名詞であるためか、擬人像には女性が多いが、「河」は年配の男性の姿を取る。(キリストの洗礼の「ヨルダン川」を参照)
観念や自然物だけでなく国や地域の擬人像もあり、いずれも宮殿などの装飾に不可欠の要素だった。(p45)
下は ForgottenBooks(USA)にあるもの
A wamen all in red,a Flame on th Crown of her Head,with an Infant sucking, her left Arm,and two other standing up ,one of which is embrac'd with the right.
The red Colour denotes Charity;the Spouse,in the Canticles,was pleas'd with it in her Beloved.The Flame signifies that Charity is never idle,but always active.The three Children shew the triple Power of Chirity,for Faith and Hope,without her,signifie nothing.
擬人像や神話の神々を組み合わせた何らかのメッセージを表現した絵画はアレゴリー(寓意画)と呼ばれ、歴史画に準ずる重要なジャンルとされた。(p45)