唐草図鑑
聖樹聖獣文様

西欧古典美術

小学館世界美術大全集(1997)

世界美術大全集4
ギリシア・クラシックとヘレニズム(水田徹編、1995年10月)

meこの巻の第5章は、「ギリシア伝統の東方伝播とローマ美術への継承」(青柳正則と田辺勝美著)となっており、ざっと目次読書後、ここを中心に見てみます。
*青柳正則(1944生):ローマ大学、ポンペイ発掘 wikipedia
*田辺勝美(1941生):ぺシャーワル大学、ガンダーラ wikipedia

目次読書

序論

ギリシア美術の世界
水田 徹

ギリシア美術の世界 
ギリシア美術の発見と研究
ギリシア美術と古文献
ギリシア美術史の時代区分

A・フルトベングラーヴィンケルマン

第1章

 クラシック様式の誕生━厳格様式時代の美術 
水田徹

動態による内面表現━厳格様式の彫刻 

ポリュグノトスの壁画と厳格様式のアッティカ陶器画 
ポリュグノトスの「エートス」表現
厳格様式のアッティカ陶器画 

精神の高揚、つまり「エートス」(vol.4-p57)

オリュンピアのゼウス神殿
メトープ彫刻
破風彫刻 

第2章

盛期クラシック美術
日高健一郎 水田徹

クラッシック建築の完成: 日高健一郎
初期クラッシック時代
盛期クラッシック時代

フェイディアスとパルテノン神殿: 水田 徹
破風彫刻
メトープ彫刻
フリーズ彫刻
パルテノン・フリーズとアテナ・パルテノス

ポリュクレイトスと豊麗様式の誕生: 水田 徹
ポリュクレイトス
ドリュフォロスとポリュクレイトスのカノン
豊麗様式の誕生、アルカメネスとアゴラクリトス
パイオニオスとカリマコス
エレクテイオンとアテナ・ニケ神殿の彫刻

前5世紀後半のアッティカの陶器画: 水田 徹
盛期クラッシック様式から豊麗様式へ

第3章 

後期クラッシック美術 
福部信敏 篠塚千恵子

クラシック彫刻の推移 クラシックの墓碑浮彫: 福部 信敏
前5世紀から前4世紀への彫刻の推移
原作の宝庫、 アッティカの墓碑 

ケフィドトスとストプラクシテレス: 福部 信敏
前4世紀彫刻の父、ケフィソドトス
優美の作家、 プラクシテレス

スコパスとマウソレイオンの彫刻家たち: 福部 信敏
小アジアの葬礼美術
マウソレイオン
パトスの作家、スコパス 

絵画的表現━アッティカ陶器画の展開と南イタリア陶器画の誕生・発展: 篠塚 千恵子
はじめに
アッティカ陶器画の残照、ケルチ様式
南イタリア陶器画の誕生・発展

絵画の興隆 : 篠塚 千恵子 

第4章

ヘレニズム美術 
日高健一郎 水田徹 中山典夫 青柳正規

クラシック建築の発展と変化: 後期クラッシックの神殿
都市と建築
クラシックからヘレニズムへ
ヘレニズムの建築

リュシッポス━ヘレニズム美術の胎動 
水田 徹 

ペルガモン彫刻とヘレニズム・バロック : 中山 典夫
ガラティア人
ペルガモンの繁栄
ペルガモンの大祭壇
ペルガモンの滅亡
ラオコーン群像とスペルロンガ洞窟の彫刻群

肖像彫刻と世俗美術: 中山 典夫
奉納像とギリシア人の信仰
その終末

ヘレニズム美術の地域性━アレクサンドリアを中心に
青柳 正規 

ヘレニズム絵画━アレクサンダーモザイクとオデュッセイア風景画
青柳 正規 
マケドニアの墓壁画
アレクサンダーモザイク
さまざまな絵画ジャンル
アレクサンドリアの葬祭絵画
デロス島の絵画
ヘレニズム絵画の展開

第5章

ギリシア伝統の東方伝播とローマ美術への継承
青柳正規 田辺勝美

ギリシア美術とローマ美術
青柳正規

前3世紀~:ローマにギリシアの優れた美術作品が大量に流入
・・・・リウィウス『ローマ建国史』に詳しい
*ホラティウス(前65ー8)「征服されたギリシアは粗野な征服者を征服し、鄙びたラティウム(都ローマがあった地方)に美術をもたらした」(『書簡詩』)
*大カト(前234-149)奢侈に流れる世情を憂慮「シュラクサイからもたらされた彫刻はこの町にとって有害」ローマ固有の伝統に固執、ギリシア文化の排斥主張したが、ローマ社会のギリシア化、ヘレニズム化を阻止できず、南イタリアに隠棲
スキピオ(前235-183)「ギリシア風に生きる」親ギリシア派
ギリシア人建築家ヘルモドロス 前146~102までローマで活躍
代理先の輸入 贅沢(ルクスリア)というギリシアからもたらされた魅力
アエミリウス・パウルス(?~前160)マケドニア戦争後、アテナイのメトロドロス、ティマルキデス、ディオニュシオス、ポリュクレスをローマに(vol.4-322, 323)

前2世紀中ごろ以降、ヘレニズム美術の中心は東地中海一からローマへ移る
前4世紀前半からギリシアで培われてきた肖像彫刻は、リュシッポスらの業績を踏まえてヘレニズム時代に大いに発展する
このヘレニズム的肖像彫刻の影響をうけ共和政期肖像彫刻を確立
また、ヘレニズム宮殿の豪華さにあこがれたローマ人は、室内を壁画で装飾するというギリシア世界にはなかった装飾法を創出する
この壁面装飾法は、創造力に満ちた展開を示し、ローマ美術の代表的分野となる (vol.4-323)

急激なヘレニズム美術の浸透は、さまざまな問題を内包させる
前3世紀まで、エトルリア美術や古イタリア美術しか知らなかったローマは、突然、すでに完成期に、達し爛熟期に入っているギリシア美術の洗礼を受けた
素朴なイタリア固有の美術要素と洗練されたギリシア美術の要素とが併存することになり、複雑な展開を示すようになった (vol.4-324)

ギリシア美術の東方伝播: 田辺勝美

先駆的な東方伝播の存在

(前6~前4世紀)アケメネス朝ペルシアが小アジアを支配、イオニア人などがアケメネス朝の宮廷美術創出に参画
例 ペルセポリス (現イラン、タフト=イ=ジャムシド)造営にイオニア人参加(ダリウス一世の楔形文字碑文やペルセポリス出土の石いたから判明している)
パサルガダエの宮殿・ペルセポリスの宮殿に残る浮き彫りの「襞」(ひだ)の導入 (メソポタミアにおいて衣の襞を描写する伝統はなかった)
ダーリック金貨やシグロス銅貨の王家の英雄「膝つき走法」(ギリシアのアルカイック美術で常用されたもの)(vol.4-324)

前7世紀後半からつくられた、 黒海北岸(クリミア半島)のギリシア植民地は周辺のスキタイ民族の注文に応じ、「動物意匠」を中心としたモティーフ「ギリシア風のスキタイ美術」を生み出す
このスキタイの動物意匠は 遊牧民の工芸美術に決定的な影響を及ぼしている(vol.4-325)

マケドニアのアレクサンドロス大王

本格的伝播は、前330年にマケドニアのアレクサンドロス大王がアケメネス朝ペルシアを征服してから
バビロンの日乾煉瓦(にっかんれんが)で作られた円形劇場
10ドラクマ銀貨(東西文化を折衷したような図像)の刻印
前323年バビロンに没:東西文化の融合を視野に置いていた(vol.4-325)

セレウコス朝 アレクサンドリア

前312年、帝国の東方地域にセレウコス朝樹立、広大な地域にギリシア文化が伝播
(地中海東岸からメソポタミア、イラン高原を経てインダス河、オクサス河流域)
拠点アレクサンドリア(アレクサンドロス大王が各地に建設した「アレクサンドリア市」
首都セレウケイア(現テル・ウマル)は、古代ギリシアのヒッポダモス(碁盤目状) の都市計画をまねる
ペルシア湾のファイラカ島(古名イカロス島)に海上交易を統括する城砦:イオニア式柱頭、パルメット装飾を施したアクロテリオンなど出土
イラン北西部ビストゥーン;ヘラクレス横臥像(前2世紀)
貨幣の表のギリシアの神→コインの表に国王肖像(胸像)の図柄が定着、正当な王位(諸王の王、バシレオス・バシレオン)の観念伝達(vol.4-326)

グレコ・バクトリアとアルケサス朝パルティアの独立

前240年ごろ、セレウコス朝から二つの国が独立
1・オクサス河中流域のグレコ・バクトリア
2・イラン高原、メソポタミアのアルサケス朝パルティア

1.ギリシア人ティオドトスによる:基本的にギリシア文化であった
(中心都市:オクサス河の南 のバクトリア、アフガニスタン北部、アイ・ハーヌム)ギリシアの都市計画に倣う

歴代の国王の肖像コイン、写実性にすぐれる、裏にはギリシアの神刻印
キュベレ女神を描写した銀製の皿(カーブル博物館)
銅製のメドゥーサ頭部
特筆すべきはメガラ碗形式の銀製の碗(チベットの貴族の家に伝世された)
アイ・ハーヌムやタジキスタン南部のタフティ・サンギーン(唐の段成式撰『酉陽雑爼 』(ゆうようざっそ)にある具徳建国カウァーディヤーン )のイオニア式やコリント式の石灰岩製の柱頭 柱礎の形式
グレコ・バクトリア朝は 前200年ごろ南下し「インド・グリーク朝」を樹立
ギリシア系要素依然として保持 、インド・スキタイ朝にも継承された(vol.4-326、327)

2.西方のイラン高原やメソポタミア・・徐々にセレウコス朝の勢力を駆逐、前2世紀にミスラダテス1世が帝国を樹立
都:ティグリス河畔のセレウケイア・テシフォン(現コケー、サルマンパク)
ギリシア文化に心酔 Philhellene(ギリシア人を愛する)とコインに刻銘
アルサケス朝の最初の首都=中央アジアのトルクメニスタンの首都アシガバード近くのニサ  ギリシア的特色、ヘレニズム系統の写実的作品

パルティア美術の中心は首都であったセレウケイア・テシフォン(実態は明らかでない)

20世紀前半の古代史家M.ロストフェフ以来の研究によれば、
パルティア美術は正面観描写を厳格に守った点、
細部を詳細克明に描写する真実主義、
線描を強調する点、
精神性・内面性の表出などが特色とされる(vol.4-328)
・・ただし、これらの特色はパルティア時代のメソポタミア美術の後期(後2~3世紀)の特色で、上述のニサ出土品のギリシア的特色とは相容れない

パルティア時代後1~3世紀のメソポタミア美術は隊商都市ドゥラ・ユーロポスやパルミラの彫刻や絵画、工芸品に代表される ・・前述のように西アジアに移植さえrたギリシア美術の影響を保持している

アケメネス朝の発行した銀貨のギリシア系造形要素(裏面の祖先アルサケスの図、環を持つニケ女神が国王を祝福している図柄)は 後1世紀初期で無くなった

イラン形式民族の支配の下でも、オリエントにおいてはギリシア文化が愛好されたが、やがて純粋にギリシア的とはいえない折衷的な(グレコ・イラン式)美術が生まれてきた
例 トルコ南東部のコンマゲーネ王国の彫刻
前1世紀 アンティオコス一世の墓:ニムルド・ダー(トルコ 海抜2150メートルの高山の頂上) ギリシアとイラン(ゾロアスター教)の混交した神の神像
ギリシアの写実様式を用いているが、文様を詳細に描写する古代オリエントないし後2、3世紀の「パルティア」美術に類似する様式も加味している (vol.4-3 29/330)

クシャン朝がバクトリアに造営した神殿(スルフ・コータル)及び近くの仏教寺院跡から
ギリシア美術のモティーフ(花綱を担ぐエロス、葡萄唐草、アカンサス9をあしらった浮き彫りが出土・グレコ・イラン式美術の伝統が確認された
古代イランの宗教には、とくにゾロアスターの宗教改革(前6世紀)以後は、神を人間の姿で描写する伝統がなかった→
「ゾロアスター教の異教化」ともいうべき現象が起こり、ギリシアの神々の擬人像を借用してゾロアスター教系の神々をコインに刻印(vol.4-330)

ササン朝ペルシアの美術に見られるヘレニスティックな要素はローマ美術の影響とみなされてきた( 摩崖浮彫り)例コーカサス地方の銀製の碗には、中央にメダイヨンがあり、 そこに王侯の胸像を浮き彫りにした装飾は、ローマの金属工芸の影響 である
これに対して帝王騎馬狩猟文を内側に描写した「ササン朝」の銀製碗は明らかにクシャノ・ササン朝に起源する。 高浮き彫りの技法は前述の銀製碗に由来:ササン朝の工芸の一部にはグレコ・バクトリアの影響がある

クシャン朝時代の美術はガンダーラの仏教美術に代表されるが、そのヘレ二スティックな彫刻や絵画はガンダーラ仏教とともに東トルキスタンに伝播し、コータン、ミーランやクチャなどの仏教寺院の装飾に用いられている。(vol.4-331)

ガンダーラのギリシア式仏教美術 : 田辺勝美

ギリシア美術が東方において最も大きな影響を及ぼしたのはガンダーラの仏教美術であろう
最大の功績は、ガンダーラにおいて初めて仏像を生み出した点にある
根本的には、クシャン朝のコイン裏面の神像表現と同じく、ギリシア美術の擬人化表現に由来する
ガンダーラの仏陀像は、王侯貴族の姿と僧侶のそれを折衷したもの
下衣や大衣はインドの仏教僧侶のもの
しかし、顔(側面観を含め)、肉体(筋肉)の造形、波打つつ頭髪、大小の襞などはギリシア美術に由来する。
我が国の清涼寺の釈迦如来立像の襞の起源は、ガンダーラ仏の襞にある
インド人の考えていた「転輪聖王」(世俗世界を統べる理想的な君主) はターバンをつけていた。
それに匹敵するものとして頭髪を残し、それを紐で縛った。 (vol.4-332)
弥勒菩薩の頭髪は8の字形に結われているが、そのモデルはアポロン神の頭髪にあった。
またキリストの肖像に見られるように右腕を衣の中に入れた仏陀立像も、ギリシアの悲劇詩人ソフォクレスに由来意匠
菩薩像はインドの王侯貴族をモデルにしている。
写実的な顔、筋肉の描写、襞の表現はギリシア美術に由来する。
仏陀像にせよ、菩薩像にせよ、立像の場合には、 ギリシアの神像の立脚遊脚の原理を導入して、身体に微妙な動勢を与えている
多数制作された、「仏伝浮き彫り」のなかには、ギリシアのトロイア戦争の図柄を借用したものもある
伝記の場面を区切るために、コリントス式の柱が用いられている
浮彫りには葡萄唐草やアカンサスの葉が装飾文として利用されてい
エロスが担ぐ「花綱」(華蔓)、トリトンなどの怪獣も、グレコ・バクトリア、インド・グリーク朝のヘレニズム文化、あるいはローマ美術に由来する(vol.4-332)

以下は細かく、また対比が興味深いので別ページへ、なおかつ 仏教美術入門、(四天王像) 、田辺勝美講義関連ページ

テーマ特集

パルテノン神殿の修復と保存 :マノリス・コレス(Manolia Kprres)長田年弘訳
修復の歴史
課題と将来

古代ギリシアのキプロス芸術 : ヨハネス・ブーロウ(Jphannes Burow)長田年弘訳
アルカイック期
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