唐草図鑑

古代の穀物の栽培文化

麦(ムギ)


加藤道理『字源物語』(明治書院)

麦(字源)

原産地アフガニスタンから西アジア一帯

思文(「詩経」周頌)
后稷(こうしょく 伝説時代の堯帝の時の人。名は棄(き)。
農業をつかさどり、周王朝の始祖とされる人物。)が
天から麦をさずかった
天から賜った来牟(らいぼう)(?=おおむぎ)
来(來)は実って穂の垂れた麦(麥)の形の象形で、麦の原字
麦が天から降りてきたところから、來が『来る』の意味に用いられるようになり、
後で足をつけた麥(麦)の字が作られたもの
足がつけられたのは、麦は冬に根を踏みつける麦ふみの必要があるからと考えられる。


五穀

=米 孔子の時代はまだ一般的でなかった
=もちきび、
=うるちきび、
=むぎ
=豆類
五穀の中で 種を秋にまき、冬を越して翌年の初夏に実るのは麦だけ
→来年と半年を越して麦の実る翌年のこと…

白川静も同様の解釈だが


wiktionaryのほうでは(2012-03-20)
https://ja.wiktionary.org/wiki/麦

字源 「麥」の略体。「麥」は音符「來(来:古い音はmleg)」に「夂(=足)」を添えたもので会意形声。「來」は麦の穂を象ったもので、それが西方からもたらされたことを意味。「來」と「麥」は元来意味が逆であり入れ替わったものとの説あり。

天からではなく西からとなっている?(出典不明)

Wikipedia
米と麦以外の穀物は一般に雑穀とよばれる。
狭義の穀物=イネ科(イネ、ムギ、トウモロコシ、キビ、アワなど)
豆科=菽穀(しゅくこく)、その他の科=擬穀(ぎこく)・・ソバなど
小麦・米・トウモロコシは世界三大穀物

Wikipediaテル・アブ・フレイラ(Tell Abu Hureyra)
(シリア 古代レバントの東部 メソポタミアの西部の考古遺跡)
今から11,000年以上前にライムギを含む穀物 を栽培した跡が見られ、
現在のところ人類最古の農業の例となっている。
おそらくレバント南部に早くからいた亜旧石器時代のナトゥーフ文化人が北東方面に当たるこの地に勢力を拡大したとみられる
https://www.britarch.ac.uk/発掘に当たったのはイギリスのA.ムーア

彩文土器に描かれた動植物

藤井純夫「彩文土器に描かれた動植物について」

(深井晋司(Wikipedia)編『デザイン誕生 古代オリエントの文様 』光村推古書院 1981.11)

不思議なことに彩文土器の中に農耕文化の姿を見ることは稀
彩文土器の文様は 幾何学文が代表であり、動物文がこれに続く。
植物文も散見されるが、それは樹木であることが多い。


数少ない資料
イラクのラス・アル・アミヤ遺跡(紀元前4500年ごろ)

『デザイン誕生 古代オリエントの文様 』P250~255 要旨へ続く

麦の図像

紀元前3000年紀「ウルクの大杯」石灰岩製

Joseph Campbell『神話のイメージ』 p82 
図71の部分  最下段
ウルクの大杯のページへ

麦穂とオス牛の石製容器//前田和也編著[メソポタミア文明](河出書房新社フクロウの本)p10
「刈り取られた麦穂がオス牛によって脱穀されているのであろう。四条の麦穂が描かれているが、その背後に後二条存在していることが推定できる。前3000年ごろウル出土。イラク博物館蔵」という説明

メソポタミアの農業//前田和也編著[メソポタミア文明](河出書房新社フクロウの本)p68

運河の水で大麦を栽培
灌漑にもとづく麦作農業では、自然の降水にたよる天水農業(ドライファーミング)に比べて収穫量が格段に増大し、安定した生産力水準が毎年期待できる

メソポタミアでは、灌漑水に含まれる塩基物が耕地に集積し、作物の生育が次第に困難になっていく。南メソポタミアではすでにウル第三王朝時代(前三千年紀末)には、麦類はもっぱらオオムギが栽培され、小麦やエンマー麦がほどんと姿を消していた。 (※大麦に比べて塩化に弱い)塩化を防止するには、耕地の排水が不可欠。 種子の条播農法の採用。水を条間に流すことで塩化を防ごうとした。(エジプトでは散播)



条播器(円筒印章復元図
 D.M.Matthews,The Kassite Glyptic of Nippur(1992):Nr.164)
前田和也編著[メソポタミア文明] p71 

古代メソポタミアでは、播種にあたって、耕起用の双柄犂に漏斗に似た条播器が取り付けられた 既に最古の文字書板(前四千年紀末)に犂を形象するサインが見える。
このサインを起原とするシュメール楔形文字は「犂」「農夫」以外に「播種条」、「条播する」をも意味することもできた。
一方 アッカド語では、「播種する」と「脱穀された穀粒を)風選する」が同一語で表現された。

この図の人物の間の十字と菱型も気になります。下部の3つの同じ図像も・・ 

前田和也編著[図説 メソポタミア文明] ですが、他に、神と王権━古代メソポタミアの「棒と輪」図像ももっと詳しく見たい⇒続く

UrukPlate3000BC
UrukPlate3000BC

me麦に関係することは、麦と女神ということでは、穂麦のマリア、また、 小麦畑の象徴Symbolic Wheatfieldsなどはゴッホの麦で見ましたが、人類の農業のはじめの話ではありません。 以下のゴッホの言葉など興味深いのですが。
「僕は人の生涯は麦の生涯のような気がして仕方がない。」(麦刈りと人の死との対応関係など、 聖書との関連が明白なせいか、麦畑の絵は 牧師たちに好まれ、 ゴッホの父の書斎にも飾られていた。)
 

me オリエントの文様図版を見る⇒オリエントの文様


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