唐草図鑑
聖樹聖獣文様

聖なる樹木と聖なる獣

杉浦康平の「生命樹・花宇宙 万物照応劇場)」
(NHK出版2000年7月刊)を読む。

大変中身が詰まっていました。
唐草の根源へのスリリングな話があったので、その部分を図表に要約引用してみます。
(ピンク色の文字は、別の文献から特に補足) 目次は以下の通り。
一 「生命の樹」の四つの樹相
二 「生命の樹」と聖獣たち
三 「生命の樹」と鳥と蛇
四 「生命の樹」と豊穣と再生の宇宙軸


「生命の樹」の四つの樹相

四つの樹相


樹相 意味 補足

直立する樹

天界と地界を結ぶ宇宙軸
地下世界-地上-天上
三つの世界を結びつける
多-一-多
(根-幹-枝)
カラムカリ(インド更紗)

うねる樹

蛇の蛇行
樹液の上昇を象徴
豊穣原理を物語る ペーズリー模様※1
イスラム寺院の飾り窓の樹
日本の小袖

渦巻く樹

唐草の力
無限の豊穣
発展 ⇒カルパブリクシャの渦※2
空間を埋め尽くす
インド アマダーバードの
イスラム廟

絡み合う樹

交尾する蛇
豊穣と再生
多-二-多 (杉浦康平の「生命樹・花宇宙}
 万物照応劇場)」)
karakusa

聖樹文様

karakusa 4kb
生命の樹  
アッシリア

聖なる樹木

聖なる中心
「太い幹から網のように張り出し枝先に花が咲き
互いに結ばれている」
一組の半人半獣が守る※
紀元前20~10世紀のレリーフ
エジプト

シカモア

(エジプトイチジク)
樹液= 大地母神ハトホルの乳
(死者の飲み物)

トトメス 三世の墓の壁画
(前15世紀)

ピラミッドテキスト
イスラム 生命樹
ふっくらと焔のように燃え立つ
巨大な樹木
糸杉を連想させる
ミフラーブ
=(聖地メッカに向かう壁の壁がん)に
かけられる
壁掛布
サッジャーダ
西インド アフマダーバード市のイスラム廟
サィードモスクの窓飾り
インド

(百花繚乱の)蓮華樹

宇宙山 (巨大な宇宙樹)
ブラフマン= ヒンドゥー教の主神
宇宙の根本原理ブラフマン(梵)の擬人化
4つの顔と4本の腕
鵞鳥(ハンサ)に乗る
ハムサ=ハム(吐く事)サ(吸う事)
インド・イスラム バンヤン(ベンガル・ボダイジュ)
「永遠の樹」
蛇の棲家話す樹
無数に連なる蛇
インド 宇宙山
移動する山
天上の音楽師ガンダルヴァのレリーフ
山車(ラタ)
仏教 生命樹
仏塔(ストゥーバ)の傘蓋
舎利(仏陀の遺骨を収めた壷 ビシャ=種)器を
祀るための建造物
下の球形はガルバ(子宮 母胎)
アーンダ(宇宙卵)
紀元前3世紀頃の舎利器(球形の壷)
胎蔵教
古代中国

扶桑樹

東海の海の上に茂る桑に似た巨大な神木
9000年に一度実をつける
樹上に10個の太陽を憩わせる

崑崙山(西方の他界)
蓬莱山(不老不死の仙人が住む、
ごうという亀に背負われて海上を漂う)
中国

連理の木

瑞祥の樹
道教
比翼の鳥
長恨歌
インドネシア

生命樹

宇宙山
山ー聖獣ー樹木
グヌンガン
スマトラ島の霊船布
(=パレパイ、タンパン)
ネパール

生命樹

生木の山車
チベット

生命樹

白傘蓋仏母(12面)
日本

生命樹(松)

仏教的宇宙山
山岳信仰
須弥山
スメール(=聖なる)⇒須弥壇
水分(みくまり)の神
五重塔の心柱
玉虫厨子(7世紀中ごろ)の背面
祇園祭の山鉾 船鉾
山車
花笠
神の依り代
諏訪の御柱

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ペーズリー文様

※1古代ペルシアからインドにかけてイスラム文化の広がりともに普及した。
「生命樹」のもう一つの姿である
この形を、
インドでは・・マンゴーの実の形
イスラムでは・・糸杉の樹相
ヨーロッパでは・・松かさ形
・・というが、
生命の樹の先端を歪曲させた
傾き揺らぎ渦巻こうとする形
である
イギリス人が18世紀にインドから輸出を始めた
カシミアショール

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カルパヴリクシャの渦

※2「樹の吐息」の文様 酸素の流れの文様化
カルパ=願いをかなえること、豊穣、如意
ヴリクシャ=樹木
⇒願いを叶える樹=如意樹、劫樹
インドラ神(帝釈天)の庭ナンダナヴァ(喜林園)に生い茂り
宝珠と同じようにあらゆる願い事をかなえてくれる万能の不思議な樹
空想の天国の樹木
西インド グジャラート州のイスラム廟の生命の樹
渦を吐き出すマカラとマカラの上に乗りインコと戯れるヤクシニー(精霊女神)の姿
タンジョール寺院、ナタラージ寺院などのレリーフ の
大理石レリーフ(17世紀)
グリフィン※
「手に末の実に似た聖具を持ち
それによって聖水(花粉あるいは樹液)を
聖なる樹にふり注ぐ儀礼を行っている」
潅頂(かんじょう)の儀式※「頭頂に水を潅ぎ、清める儀式。
生命の源である水は、浄化の力も秘めている。」
古代西アジアを初めとし、各地で行われた。
古代インドでは、国王の即位や立太子の式典で四大海の聖水を頭に注ぐ。
この儀式が仏教にも受け継がれ、潅頂と呼ばれている

「中心のシンボリズム」

※ 「中心のシンボリズム」(エリアーデ「イメージとシンボル」(※1)
どんな小宇宙も「中心」と呼びうる特別な聖域を持っている。
聖なるものが聖体示現(ヒエロファニー)(※2)神体顕現(エピファニー)(※3)して現われるのは、
まさにこの中心においてである。
「中心」は三つの宇宙界、つまり、天上界、地上界、地下界の接合点を構成する。


※1
イメージとシンボル (1971年) 」 ミルチャ・エリアーデ(Mircea Eliade)著 前田耕作訳 せりか書房刊
《中心》のシンボリズム
時間と永遠のインド的シンボリズム
《縛める神》と結び目のシンボリズム
貝殻のシンボリズムについての考察
シンボリズムの歴史

聖と俗―宗教的なるものの本質について (叢書・ウニベルシタス)

(※2)
聖体示現(ヒエロファニー)
web検索 エリアーデ『聖と俗』のポイントhttps://www.evam.ne.jp/evam/evam2/socie/ronbun/

(※3)
神体顕現(エピファニー)

※ダシ 山車 薄に銀月・稲穂に鳴子などの作り物を取り付けていた。・・
だしものの義で、屋外に出して置いて、神を招き寄せるものであったに相違ない
折口信夫全集第二巻(「盆踊りと祭り屋台と」)

NEXT* 聖獣の項へ

”「聖なる中心軸」に力を与え、宇宙軸が秘める「生命力」や「叡智の働き」を守護するもの登場”


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聖獣⇒聖獣文様

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