唐草図鑑

ゴシック建築

Abbot Suger.jpg Swedish Wikipedia - Anton Nyström, Allmän kulturhistoria eller det mänskliga lifvet i dess utveckling, bd 3 (1901).Licensed under Public domain via
サン・ドニ大聖堂のステンドグラスに描かれたシュジェール
"Abbot Suger" by Uploaded by Hedning
Licensed under Public domain via ウィキメディア・コモンズ.

シュジェール(Suger、1081年頃 - 1151年 ルイ6世の学友)
パリ郊外サンドニのサンドニ修道院長主シュジェールこそが、ゴシック美術の創始者にほかならない

(『芸術史と芸術理論』青山昌文著(2010 放送大学テキスト)P101


ゴシック建築(英語:Gothic Architecture)

12世紀後半から花開いたフランスを発祥とする建築様式。
最も初期の建築は、パリ近くのサン=ドニ(聖ドニ)大修道院教会堂(Basilique de Saint-Denis)の一部に現存)

もともと蔑称である。15世紀から16世紀にかけて、アントニオ・フィラレーテやジョルジョ・ヴァザーリらが、ルネサンス前の中世の芸術を粗野で野蛮なものとみなすために「ドイツ風の」あるいは「ゴート風の」と呼んだことに由来する (Wikipedia

ゴシック建築は、尖ったアーチ(尖頭アーチ)、飛び梁(フライング・バットレス)、リブ・ヴォールトなどの工学的要素がよく知られている⇒用語


『図説西洋建築の歴史』P11(佐藤達生著河出書房新社 2005年刊) 
建築―美と空間の系譜へ


神の住まいの美しさに対する喜び

新しい美意識の表明

(馬杉宗夫『ロマネスクの美術』p260)「汝、何人にもあれ、諸々の扉の誉れを讃えんとする者よ、黄金にもあらず、奢りにもあらず、技の苦しみを讃えよ。貴き技は輝く、されど輝く技は、諸々の真の光を経、唯一の真の光に達せんとする人々の心を輝かすものならん。
かしこにては、キリストこそ真の門戸、その内側いかなりや、黄金の扉これを限る、愚かなる心は物質を通して真実に高まり沈める心は、真の光りを見て再び起きあがる
(Mens hebes ad verum permaterialia surgit)
神を信じようとしない大衆の心(=愚かなる心)を教化するには、象徴的で抽象的なものより、自然の現象の方が、分かりやすい。=ゴシック精神

(馬杉宗夫『ロマネスクの美術』p260)前時代のロマネスク美術における知り年は「美は物質的な塊のなかに求めてはならない」(聖アウグスティヌス353-431)
サン・ドニのシュジェール・・今まで否定されていた物質的な塊(自然・人間の外観)を持って真理・美を表現しようとする

黄金と宝石

聖なる都、新しいエルサレムは、神の栄光に満ちてその輝きは水晶の如く透明なジャスパーのような、値のつけようのない宝石のようであった。城壁の土台は、あらゆる種類の宝石で飾られていた。(『ヨハネ黙示録』)


宝石類は、宗教的に極めて大切な天上のエルサレムの建築材料であった。高価な宝石類が、聖書そのものに、(世俗的な、クレルヴォーのベルナールが非難したような悪しきものとしてでなく)素晴らしいものとして登場している。

シュジェールの宇宙的瞑想

多彩な宝石の美は、時々、私を外的な煩わしさから連れ去ることがあり、そうして私は、物質的なものから、非物質的のものへと移されながら、様々なる聖なる徳へと更に移されてゆくのである。」(シュジェール 青山訳 p104)

「物質に内在している価値を称揚し、物質の重要性を力説している」

物質に内在している力

ゴシックは物質的なるものにおける本質的なるものの内在という点において、アリストテレス的な芸術である(シュジェール 青山訳p104)

「人間は、この世界に[内在している〕、物質的な〔諸々の真の光〕の中を通って、〔キリストがその真の入口であるところの《真の光》に向かって[登高〕する。」のである。

ルーブル美術館のページ より
斑岩の壺:《シュジェールの鷲》 工芸品部門 : 中世
執筆: Marie-Cécile Bardoz

==以下引用===========
サン・ドニ修道院修道院長シュジェール(在位1122-1151年)は、国王ルイ6世とルイ7世の顧問を務め、王国を支配した。
「この人物は、自身が再建を指揮したサン・ドニ修道院を豊かにする一連の計画に取組んだ。見事な典礼用の壺をいくつも制作したことは、なかでも注目に値する。シュジェールは、当時聖ドニと混同されていた偽ディオニュシオス・アレオパギテスの理論に想を得て、財宝を観想すると人間の魂を超越し、神に近づくことができると考えていた。 」

→サン・ドニについて別の側面から見る「人像円柱

内陣―光への賛歌

(馬杉宗夫『ロマネスクの美術』p266) シュジェール・・・光に対する賛美、宝石、黄金、ステンドグラスなどの、光り輝くものに対する偏愛。それらは物質でありながら、高貴な光や精神的な輝きを発する。光は純粋に精神的性質を持っておりそれが人間を神に近づけることを可能にする。 

光の美学

(馬杉宗夫『ロマネスクの美術』p268) 三世紀以来、「光の美学」というものが自覚されていた。発端はプロティノス(204-269)であった。彼は、古代ギリシア美術を特徴づけている線、形態、均衡、比例関係では、規定できない異質の美が存在していることを主張したのである。
すなわち、それらは、輝く黄金、燃え上がる赤い炎、暗闇に光る稲妻などの、光り輝くものであった。
こうした「光の美学」は、シュジェールによって、最初に勝利を得た、そこではゴシック建築において重要な役割を演じたステンドグラスが、一役買っていたのである。 


ゴシック教会を飾るステンドグラス

単に太陽光線を通す美しい窓なのではなく、それ自身が輝く物質としての壁である
(青山昌文P106)

「自ら光る壁」(ハンス・ゼ―ドルマイヤ―の所説)

ゴシック教会は「神の恩寵によって、神秘的な方法で、この劣った世界から、あのより高き世界へと移されることができるように思わせてくれる」力を持った大きな宝石としてのステンドグラスを持つ
(青山昌文P107)

ハンス・ゼ―ドルマイヤ―【Hans Sedlmayr】 1896‐1984

「天上的であること」「光的であること」


ハンス・ゼ―ドルマイヤーはゴシック大聖堂をアナゴジ―的(神秘的)意味において天上のエルサレムとして解釈しようとしただけでなく、そこに「黙示録」において幻視的に見られた神の都の具象的に与えられた模像を認めた
(ハンス・ヤンツェンHans Jantzen (『ゴシックの芸術―大聖堂の形と空間 』前川道朗訳 青山昌文P108)

Exeter cathedral


Exeter Cathedral (Bosses in England、Interior of Exeter Cathedra)


ゴシックの特徴とされている、リブ・ボールト(Rib vault)、オージブOgive (architecture)

ヴォールト(英語:vault)とは、アーチを平行に押し出した形状(かまぼこ型)を特徴とする天井様式および建築構造の総称である。日本語では「穹窿(きゅうりゅう)」と訳される。

リブ・ヴォールト(Rib vault)は、交差ヴォールトの稜線をリブで補強した形状とも言える。天井部分の軽量化が可能で、後期ロマネスク建築において使用が認められるが、特にゴシック建築において決定的な空間の特徴の1つとなった。(Wikipedia)


ゴシック建築とスコラ哲学

思考することの新様式と、建てることの新様式とは共に、パリを中心とする半径100マイルに満たない地域に広まった。
盛期スコラ学は12世紀の変り目に始まったと一般に考えられているが、それはまさしく、盛期ゴシック芸術の体系がシャルトルとソワソンにおいて最初の大成功を成し遂げたその時のことである。
エルヴィン パノフスキー、Erwin Panofskyゴシック建築とスコラ学


スコラ学の第一原理 マニフェスタティオ

manifestatito(顕示)
明らかにすること、明瞭にすること

明瞭化の習慣が最大の勝利を得たのは、建築いおいてであった。
盛期ゴシック建築は、「透明性の原理」とでも呼びうるようなものによって支配された

スコラ学の第二原理 コンコルダンティア

concordantia(和合)

盛期スコラ哲学の<大全>と同様に、盛期ゴシックの大聖堂は何よりも『全体性』を目指し、それゆえ、削除と総合によって一つで完全で最終的な解決に近づいていった。

ある権威をもったものを初めに挙げ、次にそれと和解できないように見える別の権威を持ったものに言及し、そして両者を最終的に和解させる解決を述べるというスコラ学の議論の進め方とまったく歴史的展開が、ゴシック建築の発展史に明瞭に見られることを指摘している(青山昌文P110) 


ゴシック教会

フランス最大の大聖堂、 ゴシック合理主義の極致:アミアン大聖堂
ゴシック教会には、ヴァンサン・ド・ボーヴェの『大いなる鏡』(Speculum maius)に対応する図像が豊富に存在 (byエミール・マール)

12か月の農業労働の図像

12の美徳と悪徳の図像

教会こそが、一年の労働作業を教え、中世社会に生きてゆくための道徳的教訓を、文字ではなく、図像によって教える、いわば石による<大全>であった (青山昌文P112)


ヴァンサン=ド=ボーヴェVincent of Beauvais(c.1190–c.1264)。ラテン中世世界最大の百科全書「大鏡 Speculum maius」 (The Great Mirror),を著した。

夜のアミアン大聖堂のライトアップショー(真夏と12月にのみ行われる、中世のファサードの色彩を再現するライトアップ)http://coutances.blog62.fc2.com/blog-entry-5.html

me豪華絢爛たる大聖堂について、今までは、それが、聖職者の権力意識の表れとか、世俗的な欲望の面だけから考えていたが、その面がぬぐいがたいものでなかったとは言えないが、一面、宗教的に純粋なものではなかったとも言えないことを知った。
神の家である・・・神の家の荘厳である・・・
それをいえば、『イメージの博物誌』シリーズには「神殿」という巻がある。
表紙はクリヴェッリの作品だった。
その作品から、ゴシック建築を⇒少し視点を変えてみてみたい


『ロマネスクの美術』(馬杉宗夫著 2001 八坂書房)から、サンドニの人像柱の話はこちら

△ PageTop

http://www.karakusamon.com/


唐草図鑑
目次
文様の根源
聖樹聖獣文様
文献
用語
MAIL
サイトマップ