唐草図鑑


ペルシア美術

フヴァルナー(Xvarner)


アヌバニニ王の戦勝記念碑摩崖浮き彫りの模写(BC2000年前後)

Lullubi carved rock relief. Victory of King Anubanini and goddes Ishtar.
Sar-e Pol-e Zahab, province of Kurdistan, Iran.
Relief believed to have inspired Darius the Great's relief at Behistun.
Date 1840 Source Drawing by french orientalist Pascal Coste
国王は弓と鞭を持ち裸体の敵を踏みつけている
ケルマンシャー(Kermanshah)市の西のサル・イ・プル・ズハブ(Sar-i-Pul-Zuhab)
後世のイランの王権神授図の嚆矢

me この「輪」について、巻尺であるという説が、私には親しいのだが 、「ペルシア美術史 」(深井 晋司・ 田辺 勝美 著、吉川弘文館 (1983/01) 刊)のp10 に、上記図について、
女神イエンナが国王に神聖なる王権を象徴する環(巻尺?)を伝授する図(イランの王権神授図)と一言のみ出ているが、あとは、光輪、リボンを巻き付けた輪、等という注釈。


※「棒と輪」考での、アヌバニニ王の同じ図はこちらへ

フヴァルナーとは?




「ペルシア美術史 」(深井 晋司・ 田辺 勝美 著、吉川弘文館 (1983/01) 刊)のp134 「Taq-e Bostanの有翼の飛天は、右手にフヴァルナーを持ち、左手に葡萄ないし真珠を盛った金属製碗を持っている」

フヴァルナーXvarnerという語を検索してみたのだが、こちらのPDFのみで、特に見当たらない・・「王権の正統性を示すかぶりもの」を持つ有翼神像(ウァナインティー女神)という表現である・・


この6世紀ササン朝ペルシアの、タ―ク・イ・ブスタンの像について、宮下佐江子さんは「リ―ス」という言葉を使っておられる。「有翼人物像の起源」(人面鳥と有翼人のイメージにみる東西文化の交流第三部)
先行する1世紀のパルミラ博物館蔵の同様な、神殿アーチ有翼女性像ありもいくつか紹介されている。(下に2つ引用)


※ところで宮下佐江子さんはこの本で

メソポタミアで、翼は空を飛ぶための道具ではなく、異界のもののシンボルであったこと、エジプトでも、母鳥が、翼を広げて雛を守るつような慈愛の表現であったこと、アッシリアの王宮のレリーフでも、飛翔することはない。

「西アジアで飛翔する有翼の人物の図が描出されるようになるのは、ローマ帝国の西アジア進出に伴っており、地中海世界からの影響を一つの要因と考える必要がある。」(p261)

また、

タ―ク・イ・ブスタンのアーチの天使は、ギリシア陶器で見られた飛ぶ天使よりさらにのびやかに天空を舞うようなった
しかし、翼をもつ表現は中国の人々にはなじみにくいものがあった。かの地に仏教の伝播と共に表れた天人は翼ではなく、軽やかな衣とともに登場した
時代、地域の違いというだけでなく衣の素材そのものに決定的な差がある。

古代織物の研究者である横張和子氏によれば(※)、ギリシア彫刻のはっきりした襞の表現は絹では決して表せな造形であるという。』「ローマ時代になると有翼人物が軽やかに飛び始めたのは絹の普及と大いに関係があるのではあるまいか。

有翼人物、天使、天女、飛天の衣表現の違いはその地の人々の用いていた衣服の素材の違いを表しており、東方の絹織物が西方へ浸透していく変遷をたどれるともいえるのである

・・と書かれておられる。

絹の道 シルクロード染織史
長沢 和俊/横張 和子/著 講談社 200101刊
(内容紹介 :2000年の時空を超えて、今甦る錦の数々…。太古以来、アジアとヨーロッパ、北アフリカを結んできた東西交通路・シルクロード。東西文化交流に絹染織が果たした役割を、参考図版400点や新資料とともに紹介する。



p322 図2-25  シリア、パルミラ北部斜面市壁出土 3世紀半ば パルミラ博物館蔵
Charles-Gffior J.st.als.,2001.1

me 確かにこれなど、厚みの質感が「リース」。リボンはないように見える。有翼女性の顔も多少ローマ風だ。空を飛んでいるのかはよくわからない・・(立っているようにも見える)


p317 図2-19 バールジャミン神殿アーチ有翼女性像 1世紀頃 パルミラ博物館蔵 Tanabe,K., 1986 pl.74

meこちらは丸くなく、月桂樹のような形で、リボンは細い。やはり、ギリシア・ローマイメージだが、マークは太陽円盤風

mePalmyra Museumに関連する過去のページ: ローマの周辺地域の葡萄唐草文


「フヴァルナー」の用例:検索続行


長安幻想とシルクロードの旅〈下巻〉googlebook: 著者: 山崎久雄 文芸社刊

→「王権の象徴フヴァルナー(光輪)を受け取ろうとしている」? 意味不明


http://plaza.rakuten.co.jp/assyriologie/

王冠の表すシンボリズム。フング・イ・ナウルージーの磨崖浮き彫りに、王冠(フヴァルナーを表すとされる)を咥えた鷲が中央の人物の近くを飛んでいる。フヴァルナーはイマ(最初の王)から鳥の姿をして飛んで行ったと、アヴェスタに記されている。アケメネス朝時代の、アフラマズダ神のシンボルとされているモチーフも、フヴァルナとする説が出ている。

→「王冠がフヴァルナーを表す」? 意味不明


『古代オリエント事典』参照
(フヴァルナー、リング、リース・・そんな項目はなかった)

フワルナフ

フワルナフ Khwarnah

古代イラン王権の象徴
アヴェスター語・・栄光と訳す
始原の王イマが虚言を語ると、イマの栄光は3度の渡り水中に去り、水らのもとに帰る。
図像的にはミスラ神の前後にフワルナフとイノシシが付随して走る。
この二つは王や人に食べられる神である。
語源には幸樹、栄光の他に食物の初物の意味も想定される。
古代ぺルシア語farnah-(※http://www.iranicaonline.org/articles/farrah,
パフラヴィー語xwarrah(現代ペルシア語farr),
クシャン朝のコインにはPharro(神名)として出てくる。サーサーン朝期の帝王叙任式浮彫図においては、王に手渡されているリボンのついた輪が、その図像表現の一つである。(by井本英一)

→検索用語を切り替えますkhwarnah

Gilded silver plate with a senmurwGilded silver plate with a senmurw / Nickmard

Gilded silver plate with a senmurwThe central creature is usually indentified as the senmurw of Zoroatrian mythology. It has the head of a snarling dog, the paws of a lion and the tail of a peacock. The bird depicted is described in Pahlavi literature as nesting on the tree without evil and many seeds and scattering them to encourage future growth. For this reason it was beleived to bestow khwarnah (glory and good fortune).About 7th -early 9th century, possibly from India

シームルグについてはこちらに続く

Iranian earrings Sasanian Period 5th century CE

このイヤリングのイメージが気になる


Relief of Narseh (r. 293-303)

The Investiture of king Narseh (293-303) is carved into the rocks near the tomb of Darius I the Great. The king, the second large figure from the right,
receives the cydaris ring from a female figure.


Investidura del rei Bahram I, Bishapur
Sasanian rock relief at Bishapur: investiture of king Bahram I (273-296) (right), who receives the ring of power (cydaris) from the supreme god Ahuramazda (left).
http://www.livius.org/sao-sd/sarab/sarab-e_qandil.html

the cydaris ring

http://en.wikipedia.org/wiki/Gobryas
Ardashir receives the ribboned diadem (cydaris), the symbol of kingship, from the spirit of Darius the Great of the Achaemenid dynasty.


diademディアデム 1.王冠. 2王権; 王位.

Wikipedia(英語版) http://en.wikipedia.org/wiki/Diadem
1911年発行エンサイクロペディアhttp://www.1911encyclopedia.org/Crown
It is desirable to remember the distinction, for, although diadem and crown are now used as synonymous terms, the two were originally quite distinct.


Wreaths (Wikipedia)


連珠文  平山郁夫シルクロード美術館
メダイヨン  バルトルシャイティスの本


Taq e Bostan Ardashir_II

浮彫を見ると。まず、あたまの上の丸いものが特徴的・・
これは、
髷を覆う球体装飾は
宇宙(地球)の支配者たる「諸王の王」のシンボル
、というが・・

ターク・イ・ブスターンの摩崖浮彫図像解釈学的試論(田辺勝美)

王冠形式について
ディアデム(正当な王位の標識)三点文(天空を意味する)
ササン朝の帝王の王冠形式はゾロアスター教の神(オールムズド、アナーヒター、ミスラなど)の冠と密接に関係しているという前提
、裾が半円形に湾曲したエプロン型上着(apron-shirt)
ササン朝の正当な王位とはどのようなものであるかと言うイデオロギーが内壁の諸彫刻によって象徴されているのである。そのイデオロギーはジョルジュ・デュメジルの言う「三職能説」(idéologie tripartie: 聖職者、戦士、生産階級)に他ならない[Dumézil 1958、松村(訳)一九八七]。

IR04-08-27a
アーチの向こうで手渡し儀式
天女はコルヌコピアから出てきているように見える
あるいは 別のリボンの形と統一されているリボン

ShapurIII
エプロン型上着(apron-shirt)

ターク・イ・ブスターンの摩崖浮彫図像解釈学的試論(田辺勝美)
(P139 )大洞の浮彫

3種類の図
王権神授、帝王叙任式図(帝王=神官階級の代表者)
帝王騎馬戦闘図 (戦勝図)(帝王=戦士階級の代表者)
帝王狩猟図((帝王=農民と牧畜民の代表者)
・・帝王=宇宙の支配者というインドーアーリア民族の伝統的帝王観が浮彫の主題

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